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朝日新聞社

富士山噴火、もうそこまで? 麓で始まった本気の避難対策

初出:2013年11月20日〜11月23日
WEB新書発売:2013年12月6日
朝日新聞

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 一度噴火すれば、溶岩流も火砕流も土石流も火山灰も……。「噴火のデパート」とも呼ばれる富士山ふもとで、本格的な噴火対策が動き始めた。前回の噴火からすでに300年以上。経験を生かすことなどできない対策は、すべてが手探りとも言える。住民の避難計画、自治体の態勢、そして観光客への対応。鹿児島・桜島、北海道・有珠山などの先例を参考にしながら、世界的に例がなく、最先端かつ最困難な対策に取り組む地元の姿を追う。

◇第1章 避難、まず地区分けから 火山灰・溶岩流…想定無数
◇第2章 もしもの仮庁舎どこに 内か外か「安全」にらむ
◇第3章 観光業者にジレンマ 自主訓練、客足心配する声
◇第4章 有珠山、減災成功の前例 「地域で危機感共有が必要」


第1章 避難、まず地区分けから 火山灰・溶岩流…想定無数

 「大規模噴火の場合、どのくらい火山灰が降り、どの程度の噴火をイメージして避難を考えなければいけないのか。中規模噴火の場合はどうか」
 2013年10月下旬に山中湖村で開かれた、山梨、静岡両県の15市町村でつくる「環富士山火山防災連絡会」で、富士吉田市の防災担当者が、そう問いかけた。
 富士山が噴火すると、火山灰が数十センチ積もることも想定されている。連絡会に参加した甲府地方気象台の担当者は「今のところ(家屋の倒壊の基準となる)30センチ降るのに、どのくらい時間がかかるのかなどの情報は出せない」と答えるにとどまった。

◎優先、決めやすく
 宝永噴火(1707年)から300年以上沈黙する富士山のふもとで、噴火を想定した避難計画づくりが本格的に動き始めている。
 溶岩流は噴火後、斜面をゆっくり流れるため、避難計画が立てやすい。最も進んでいる溶岩流の避難計画では、富士山域を地形の特性から溶岩が流れる可能性のある17地域に区分した。04年にできた「富士山ハザードマップ」の避難ゾーンや、気象庁が発表する「噴火警戒レベル」を組み合わせることで、火口の位置に応じ、どこの地域の住民が優先的に避難すべきか判断しやすくなった。
 神奈川県を含め、13年11月7日に開かれた「富士山火山防災対策協議会」の3県コアグループ会議では、火砕流や融雪型火山泥流、火山灰などについてもそれぞれ大まかな避難基準が示された。


 ただ、13年度まとめる火山灰の避難計画は一筋縄ではいかない。計画では、火山灰が30センチ以上積もると予想される地域を避難対象エリアとし、エリア内の強固な建物に避難するよう住民に呼びかけるための基準を設ける。だが、火山灰は風の影響を大きく受けるため、被害地域を想定することが難しい。
 一方、火山の研究は途上にあり、ハザードマップの作製後に新たな火口も見つかっている。県環境科学研究所の荒牧重雄所長は「火口ができる可能性がある1次避難ゾーンが大幅に広がる」と指摘する。
 噴火に伴う現象に応じた具体的な避難ルートの検討もこれからだ。ふもとではマイカーで避難するケースが多いと想定され、幹線道路の渋滞も懸念される。
 しかも避難計画は、溶岩流や火山灰など、噴火に伴う現象がそれぞれ単独で起きると想定したものだが、実際には複合した現象になる可能性がある。溶岩流では避難計画を考えやすくするためエリアに分けたが、エリアの線上で噴火するおそれもある。現象が複合した場合に対する避難計画は検討が始まっていない。
 それでも、エリアを分ける考え方は避難計画の検討方法を大きく変えた。区分されていなければ、「噴火警戒レベル」が上がった場合、山域の全住民らが一気に避難を検討しなければならない。火口ができる位置に応じ、避難の優先順位がつけられる利点は大きい。



◎観光客は後回し
 避難計画では観光客や登山客の具体的な避難手段は含まれていない。観光客らが訪れる場所や数は季節によって異なることに加え、居住地域近くまで重大な被害を及ぼす噴火警戒レベルに達するまでに避難はすでに呼びかけられており、観光客は避難を始めているとみなすためだ。観光・登山客対策は今後の課題として残されている・・・

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