【お知らせ】WEB新書は閉店しました。

文化・芸能
朝日新聞社

宝塚100年の青春 大地真央、黒木瞳らが音楽学校時代と舞台裏を語る

初出:2013年7月8日〜11月27日
WEB新書発売:2013年12月6日
朝日新聞

このエントリーをはてなブックマークに追加

 「男役は10年といわれてますが、娘役も並大抵の苦労ではない……びっしびし言いました。宝塚の1番になろうって」(大地)。「舞台の袖にひっこむたび、今のシーンどうでしたかって必ず聞きにいきましたね。『いいと思ってんの』って」(黒木)。2013年7月に創立100周年を迎えた宝塚音楽学校と14年4月に創立100年を迎える宝塚歌劇。多くのタカラジェンヌを生んだ輝かしい歴史や舞台裏の秘話を、80年代月組トップの名コンビ大地真央と黒木瞳が、梓みちよ、内田もも香らが披露する。

◇第1章 タカラヅカ、100年の青春 大地真央&黒木瞳、思い出トーク
◇第2章 「女・裕次郎」に一目ぼれ
◇第3章 あの1年があったから
◇第4章 涙が育んだ同期の絆
◇第5章 きたれ原石、粗削りでも


第1章 タカラヅカ、100年の青春 大地真央&黒木瞳、思い出トーク

◎びっしびし言った、1番になろうって/生徒は宝、もっと輝いて
 大地 最初の出会いは1番教室に私がいて、ショーコ(黒木さんの愛称)が同期生たちと入ってきたんです。えって思ったのがこの人。タイトスカートをはいて。その頃の娘役ってファッションがあったんです。ブリッとしたスカートとかね。その中で目をひきました。


 黒木 フレアスカートじゃなかった。

 大地 その後、「あしびきの山の雫に」で相手役に。大抜擢(ばってき)だったね。

 黒木 1年目です。第一声が「はー」。演出の柴田侑宏(ゆきひろ)先生と「はー」特訓がありまして。「はー」だけ何時間もやりました。忘れもしない公演の初日。「はー」って出ていったら、大劇場の3階席まで爆笑されたんです。緊張のあまり声がひっくり返ってしまって。


 大地 私は、謀反の罪をきせられて殺されてしまう悲劇の大津皇子だった。

 黒木 辞世の句をよまれるとき、私はそばにいたんですが、真央さんの目から涙がつーっと流れたんです。芝居って虚像を演じることだと思っていたけれど、その人になっていらっしゃる。こういうふうに芝居って取り組むんだって。

 大地 かわいいね。自分も舞台にいるのに。

 黒木 ほとんどお客さんになっていましたし、そばで学ばせてももらいました。

 大地 トップお披露目公演「情熱のバルセロナ」のとき、ショーコは初舞台から2年目だから大変だったと思うんです。男役は10年といわれますが、娘役も並大抵の苦労ではない。わかってたんですけど、びっしびし言いました。宝塚の1番になろうって。

 黒木 ついていかなくちゃって必死。22歳でした。「ひとが10年かかってできることを、あなたは今できなきゃいけない」って。

 大地 本当にがんばりやさんで。泣いたこともいっぱいあったと思うけれど。ふたりでやった作品はすべて満足しています。毎日反省会した。あそこ、ちょっと角度が違うとか。このタイミングもうちょっと待ってとか。やり直したいなあ、なんてない。それぐらい燃え尽きた感。

 黒木 私はもう一度やらせてもらいたいな。あまりにもできなかったから……。舞台の袖にひっこむたび、今のシーンどうでしたかって必ず聞きにいきましたね。「いいと思ってんの」って。「失礼しましたー」みたいな(笑)。それもコミュニケーションでしたね。一度大部屋で下級生を叱咤(しった)激励されたことがあった。舞台人というのはね、感性、想像力、努力よとおっしゃったんです。

 大地 感性、努力、研究心じゃない?

 黒木 そうそう。みんな怒られてるのに、見とれてました。

 大地 自分も失敗ばっかりしてたのに。立場上言わなきゃって。でも、しかしよく食べたし、よく飲んだね。

 黒木 焼き肉を食べにつれていって下さるんですけど、私のママチャリがあって2人乗りで。申し訳ないから「私が先に運転します」といっても、「私が先でいいから」っておっしゃって。ふたりで10人前ぐらい食べて、さあ、じゃあ運転しようと思ったら、上り坂なんですよ。ゆるい坂がずっと続く。これかーって。翌日、舞台でリフトされたとき、支えられなくなったんですよね。

 大地 ころんだね。「ガイズ&ドールズ」で。でも、2人の息はぴったりだったと思います。愛し合ってました。私はこの人が相手役として最高だと思ってました。

 黒木 私はヨメにきましたんで、ついていくって。

 大地 宝塚ってすごくいいところなんで、きりがないんですよ。でも、いつかは卒業していくと決めていたので、退団を決心した時、やめるよってショーコに一番に言った。


 黒木 「一緒にやめてもいいですか」って聞きました。1年生のときからご一緒させていただいているので、ほかの方とは考えられなかったし。

 大地 彼女がほかの人と組んだら、わが妻をとられたような気になったかもしれないですね(笑)。私は退団後、男役だったことを無理に捨てようとはしませんでした。今でも底辺に薄く、引き出しみたいにありますよ(笑)。私は、男である、その人物になりたかった。白馬にのった王子様でなくて、ちょっとかっこ悪いところや暗いところ、多面性のある男の理想像を目指していました。

 黒木 娘役は髪飾りとか自分で考えなきゃいけないんです。一つの場面で三つぐらい用意しておかないと、へんて言われるんですよ。「これ、へん」「こっちは?」「へん」「こっちは?」「まあまあ」「はい」みたいな。

 大地 「へん」しか言わなかった。時間ないんだもん。でも、センスよかったよ。衣装の先生も着せがいがあったと思います。お人形みたいだったもん。あ、いまもかわいいよ。

 黒木 娘役って存在をなくせるんですよ。それができないと娘役はできない。お客様のいい気持ちをじゃましちゃいけない。でも、きれいでないといけない。

 大地 男役の横にいる人がかわいい人だと悔しいといいながら、かわいくなきゃイヤ・・・

このページのトップに戻る