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朝日新聞社

迷走する日本の原発 ごみ処分場なし、無責任汚染水、原子力ムラ復活…

初出:2013年11月18日〜2014年1月20日
WEB新書発売:2014年1月31日
朝日新聞

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 「再稼働すると言っても(核のごみの)最終処分場が見つからない」と小泉純一郎元首相が訴えれば、「発電は引き受けたが、中間貯蔵や処分まで引き受ける義務はない」と福井県知事。使用済み核燃料は満杯で、廃炉は先送り。福島の汚染水も処理できないうちに政府とメーカーは原発を海外に売り込み、経産省と財務省は対立し、東電に融資する銀行は再稼働で黒字を促す。原発新増設を主張する有識者と原発推進で意気込む自民電力族……。福島の事故はなかったのか。迷走する日本の原発の現在を多角的に追う。

第1章 原発ごみ、行き場なし
第2章 除染費用は誰が払うのか〈省庁の攻防〉
第3章 リスク抱えて輸出攻勢〈原子力メーカー〉
第4章 東電破綻回避へ一心同体〈金融機関〉
第5章 再稼働へ、迫る包囲網〈揺れる首長〉
第6章 衆参で大勝、増える電力族〈推進に走る自民〉
第7章 新増設、先走る有識者〈経産省審議会〉
第8章 揺らぐ「低コスト神話」〈政府と電力会社〉


第1章 原発ごみ、行き場なし

◎東海原発、廃炉先送り
 国内の商業用原発として初めて廃炉を決めた日本原子力発電東海原発(茨城県)が、2014年度から予定している原子炉の解体作業を先送りし、廃炉が遅れる見通しになった。原子炉内の部品や制御棒など、解体後に出る「廃炉のごみ」を埋める処分場がいまだに決まっていないからだ。
 商業用原発では、08年に中部電力浜岡原発(静岡県)1、2号機、11年に事故を起こした東京電力福島第一原発(福島県)1〜4号機の廃炉が決まり、5、6号機も廃炉が検討されている。ほかに運転を始めてから30年以上の古い原発も15基あり、「原則40年」で運転を終えるなどして廃炉が相次ぐ見通し。だが、いずれも処分場のめどは立たず、廃炉の道筋はできていない。
 東海原発は66年に国内初の商業用原発として運転を始め、98年に運転を終えた。これを受けて政府は、廃炉のため、原子炉内の部品などを「低レベル放射性廃棄物」として50〜100メートルの地下に埋める「余裕深度処分」の方針を示した。
 日本原電はその処分場が決まることを前提に原子炉の解体計画を出し、06年に経済産業省の認可を受けた。計画では、原子炉は11年度から6年間で解体▽低レベル放射性廃棄物は2万7800トンあり、このうち余裕深度処分が必要なのは約1600トン▽廃炉の費用は約885億円、とした。
 しかし、処分場が決まらず、日本原電は10年に「解体装置の準備が整わない」という理由で解体を14年度からに先送りした。その後も処分場のあてはなく、原子力規制委員会は「対象が存在しない」などとして処分場を審査するための規制基準も定めていない。このため、複数の関係者が「来年度に解体を始めるのは難しい」と明らかにした。
 政府内で処分場の候補に挙がっているのは青森県六ケ所村だ。原発の「使用済み核燃料」を再び使うため、電力各社が設立した日本原燃が再処理工場を造っている。日本原燃は02年から工場の敷地内で地下約100メートルまで掘って調査を始め、経産省の外郭団体の原子力環境整備促進・資金管理センターが引き継いだ。
 しかし、六ケ所村は「調査の試掘だと聞いている。再処理工場の協定書には想定されておらず、申し入れもない」。青森県も「調査坑に放射性廃棄物を受け入れる話はない」(原子力立地対策課)と、処分場としての利用を否定している。




◎使用済み核燃料、満杯状態
 「原発ゼロ」を訴える小泉純一郎元首相は13年11月12日の記者会見で、こう持論を語った。「(原発を)再稼働させると言っても、(核のごみの)最終処分場が見つからない」
 政府は、すべての使用済み核燃料を再処理して再び燃料として使う「核燃料サイクル政策」をとっている。だが、日本原燃の再処理工場(青森県六ケ所村)はトラブルが続き、いまだに完成していない。
 たとえ工場が完成しても、核のごみの行き場はない。再処理後には「高レベル放射性廃棄物」という核のごみが出るが、これを地下深く埋める最終処分場のめどが立たないからだ。
 02年、経済産業省の外郭団体「原子力発電環境整備機構(NUMO)」は最終処分場の受け入れ先を公募した。だが、応じたのは高知県東洋町だけ。東洋町も住民の反対などですぐに撤回してしまった。
 今、国内の原発の使用済み核燃料は合わせて約1・7万トンにのぼる。これらは各原発などで水をはった保管プールで冷やし、保管されたままだ。
 「小泉元首相は最終処分場は夢のまた夢と言うが、各原発には(使用済み核燃料の)『中間貯蔵』はたくさんある。何年かの契約で(保管場所を)移すような方法を探ってもよい」
 13年11月7日、原発を推進する自民党議員らでつくる電力安定供給推進議員連盟の会合で、会長を務める細田博之元官房長官はこう訴えた。使用済み核燃料を各地の回り持ちで保管し続けてはどうか、という案だ。
 しかし、国内では保管プールがあと数年でいっぱいになる原発が多い。東京電力福島第一原発の事故では4号機のプールの水が減って使用済み核燃料が露出し、大量の放射性物質を放出するおそれもあった。
 こうした不安から、原発が立つ地域では、細田氏が言うような案を警戒する動きがすでに出ていた。

◎「消費地で貯蔵を」要請
 13年6月、関西電力に「リサイクル燃料資源中間貯蔵施設設置推進プロジェクトチーム」という名の組織ができた。使用済み核燃料の中間貯蔵場を確保するのがねらいだ。7月には八木誠社長をトップとする「推進会議」もつくった。
 きっかけは福井県の西川一誠知事からの要請だ。県内には関電の美浜、大飯(おおい)、高浜の3原発が立つ。
 「発電は引き受けてきたが、中間貯蔵や処分まで引き受ける義務はない。消費地の火力発電所の敷地などを真剣に考えてほしい」。4月、西川知事は八木社長に大阪市などを念頭に中間貯蔵場を造るよう求めた。
 ただ、美浜原発がある福井県美浜町の山口治太郎町長は「(現実には)消費地の理解は得られない」と言う。関電も「全社一丸」と強調するが、専従する社員は4人しかいない。
 すでに関電の3原発は、すべてが再稼働すれば、使用済み核燃料の保管プールが7年ほどでいっぱいになってしまう。最終処分場や中間貯蔵場どころか、目先の保管もおぼつかない。
 関電など5電力会社は原子力規制委に計7原発14基の再稼働を申請し、一部は年明けにも審査が終わる。だが、増え続ける使用済み核燃料や核のごみをどうするかの答えはまだない。

◎運転30年以上、廃炉迫る15基
 国内の原発は、たとえ廃炉をしても出口がない。
 「運転開始から30年以上たつ原発の廃炉が相次ぐ」。経産省のある官僚は、今後、運転開始から30年以上たつ原発15基(東電福島第一原発を除く)の廃炉は避けられないとみる。
 東日本大震災後に改正された原子炉等規制法では、原発の運転を「原則40年」と定めているからだ。各電力は古い原発の再稼働のために投資をするより、廃炉を選ぶ可能性もある。だが、廃炉で出るごみの処分場も決まっていない。
 日本原子力発電東海原発(茨城県)より前に廃炉を決めた原発がある。1976年、旧日本原子力研究所(現日本原子力研究開発機構・JAEA)が実験炉「動力試験炉」(茨城県)の廃炉を決めた。
 96年に原子炉の解体を終え、「低レベル放射性廃棄物」という廃炉のごみが3770トン出た。このうち50メートル以上の地下に埋める「余裕深度処分」が必要な制御棒などは140トンあるが、処分場のめどが立たず、今もJAEAの敷地内の施設で保管されたままだ。
 商業用原発の東海原発を廃炉にすると、余裕深度処分が必要なごみは10倍以上の約1600トンに達する。中部電力浜岡原発(静岡県)の1、2号機や東電福島第一原発1〜4号機の廃炉も決まっており、廃炉のごみはどんどん増える。
 政府は震災前、30年までに余裕深度処分が必要な廃炉などのごみは計約5万トンに達するとの見通しを出した。だが、「原発依存」に戻るにしても「原発ゼロ」を進めるにしても、いまだに廃炉の道筋はついていない・・・

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