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スポーツ
朝日新聞社

教えて2020東京五輪! 3・11後の日本でどんな祭典になるのか?

初出:2013年10月16日〜12月28日
WEB新書発売:2014年1月31日
朝日新聞

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 1964年大会から56年ぶり、2020年に再び日本の首都で開催される東京五輪。東日本大震災と福島原発事故を経験したあとの五輪の姿はどうあるべきか。スポーツを通して日本は世界に何を示すのか。聖火リレーは東北の被災地も走るの? 経済効果だけでなく、環境への影響も配慮している? 新設会場22のうち11が仮設のわけは? 鉄道・道路網の整備や地震対策は? 政治がらみで中国や韓国はボイコットしない……? 気になる24の疑問や課題に、五輪史の光と影をふまえつつ丁寧に答える。

◇第1章 秋開催できないの?
◇第2章 野球・ソフトボール復活の可能性は?
◇第3章 建て替える国立競技場、どう変わる?
◇第4章 競技施設、終了後はどうなるの?
◇第5章 組織委員会はどうなるの?
◇第6章 聖火リレー、どんなルートになりそう?
◇第7章 入場券、どうやって買うの?
◇第8章 もう一つの祭典、受け入れ態勢は?
◇第9章 憲章が掲げる文化プログラムって?
◇第10章 メダルラッシュへ、選手強化策は?
◇第11章 経済効果、予想は?
◇第12章 TV・観光・スポーツ用品…経済効果は?
◇第13章 都心の鉄道網、ちょっと便利に?
◇第14章 首都圏の道路整備は間に合う?
◇第15章 空港の発着枠不足、どうする?
◇第16章 競技施設の建設費、全部でいくら?
◇第17章 震災復興の人手・資材不足を助長?
◇第18章 地震や津波への対策は?
◇第19章 二酸化炭素対策や緑地保全は?
◇第20章 競技会場への移動、渋滞対策は?
◇第21章 ボランティア、何をするの?
◇第22章 テレビとネットはどう伝える?
◇第23章 なぜ政治に振り回されるの?
◇第24章 市民スポーツに波及効果は?


第1章 秋開催できないの?

 夏季五輪の最終日は、男子マラソンで競技のフィナーレを飾るのが恒例だ。
 7月24日に開会式を迎える2020年東京五輪だと8月9日。8月第2週の日曜日に設定されている。
 13年に当てはめると8月11日。この日、東京都心の最低気温は午後11時49分の30・4度。都心で30度を下回らなかったのは1875年の統計開始以来初めてだった。最高気温は38・3度。7年後を考えると、選手には厳しいデータが並ぶ。仮に早朝か夕方以降だとしても、マラソン選手が熱中症で倒れる危険性がある。
 そもそも、大会を通じて屋外競技の選手、観戦客の健康が心配だ。猛暑だった13年の7、8月、熱中症で救急搬送された人は、東京都内で4千人を超えた。
 1964年の東京五輪の開会式は、秋晴れの青空が広がった10月10日だった。当時も7〜8月開催が候補に挙がったが、暑さ、湿度、食中毒など衛生面の懸念から却下となった。
 20年大会も気候的には秋開催が理想なのだが、現実は厳しい。国際オリンピック委員会(IOC)が、7月15日〜8月31日の期間内におさまるよう、立候補都市に求めているからだ。
 五輪憲章は「選手の健康を守る施策を奨励、支援する」「スポーツを商業的に悪用することに反対」とうたうが、意に介さない。
 IOCが夏開催にこだわるのは、テレビの放映枠で人気プロスポーツとの争奪戦を避けたいからだ。秋は欧州ならサッカー、米国は大リーグが佳境を迎え、アメリカンフットボールのNFLとも競合する。
 中東カタールの首都ドーハは、酷暑を避けて20年五輪に10月開催で立候補したが、IOCは1次選考で外した。主な理由は「テレビ放送時間を確保しづらいから」と正直だった。
 ロゲIOC会長(当時)に13年2月にインタビューした際、疑問をぶつけた。「せめて2000年シドニー五輪のように9月中旬の開幕は無理ですか?」
 ふだん、選手本位の大切さを説く会長の答えは「難しい」と冷淡だった。
 IOCの繁栄を支える最大の収入源が放送権料だからだ。10年バンクーバー冬季五輪と12年ロンドン五輪で約39億ドル(約3900億円)。そして、IOCは収入の9割を各国・オリンピック委員会や各競技の国際連盟などに還元する。巨額の補助金を受け取る側からは反対しづらい。
 サッカーの22年ワールドカップは開催国カタールの酷暑を避けるため、通常の6〜7月の開催を、冬季に変更する案が検討され始めた。五輪も、かつてのように秋開催の扉が開けば、中東や東南アジアなど真夏には不向きな都市にとって、開催する夢が膨らむ。
 IOCの初代マーケティング部長で、長年、五輪放送権交渉に携わったマイケル・ペイン氏は否定的だ。10月1日に閉幕したシドニー五輪は世界のテレビ関係者に評判が悪かったという。「選手の立場で考えても、人気プロスポーツと競合しない時期に開いた方が、自分の活躍がメディアに露出しやすいメリットがある・・・

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