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政治・国際
朝日新聞社

米国を悩ませる尖閣問題 アジアの政治情勢を不安定にした日本の政治

初出:2014年1月14日〜1月19日
WEB新書発売:2014年2月7日
朝日新聞

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 「それが最善の策なのですか」。2012年9月11日、民主党の野田政権が尖閣諸島を国有化した。端緒は石原元東京都知事の都購入案。同盟国の米国には相談しなかった。米国は不信感を抱き、中国は激怒した。日中関係は最悪化し、米国にも飛び火した。そこに13年末、安倍首相が靖国神社参拝を断行。中韓の緊張は一気に高まり、米国は失望した。日本の政治判断は適切なのか。国益と日中のはざまで苦悩する米国の立場を子細に追いながら、米国の視点から日本外交の大儀を検証する。

◇第1章 「尖閣国有化必要なのか」
◇第2章 日中のはざま、飛び火警戒
◇第3章 「日本は同盟国」 根回し徒労
◇第4章 「日本に施政権」議会表明
◇第5章 中国を警戒、表現踏み込む
◇第6章 靖国参拝、衝撃と失望


第1章 「尖閣国有化必要なのか」

◎クリントン氏、野田氏に迫る
 ペットボトルの水とグラスが置かれた細長いテーブルを挟み、野田佳彦首相とクリントン米国務長官が向き合った。
 「本当に国有化する必要があるのですか」。クリントンは目を見開き野田に迫った。2カ月前に野田政権が国有化方針を打ち出した沖縄・尖閣諸島のことだ。2012年9月8日。ロシア・ウラジオストクで開かれたアジア太平洋経済協力会議の会場で2人は会談。民主党大会に出席したオバマ大統領に代わり、クリントンが代役として臨んだ。
 「国有化後にどのような見通しを持っているのですか」。クリントンはたたみかける。野田は外務省が用意した応答要領に目を落としながら説明した。東京都より国が購入したほうが島の安定した維持管理ができること、現状を先に変更したのは中国であること。
 だが、クリントンらは納得しているように見えなかった。その日夜、夕食会で、会談に同席した長島昭久首相補佐官とキャンベル国務次官補が話し込んでいた。米側のただならぬ雰囲気に、長島は改めて日本側の考えの説明に追われた。

◎相談なく不信感
 オバマ政権は当初から、日本の方針に複雑な思いを抱いていた。その年の7月8日、東京のホテルオークラの一室。「それが最善の策なのですか」。キャンベルは長島に問いただしていた。前日の7日、朝日新聞が尖閣諸島国有化の計画を報じ、野田も正式に公表したばかり。報道まで日本側からキャンベルら高官が何も知らされていなかったことも、米側の不信を募らせた。
 「中国の理解を得ているというのが日本の説明だったが、我々は率直に言って疑っていた。正確ではないと思っていた」とキャンベルは話す。キャンベルと部下2人は外務省アジア大洋州局長の杉山晋輔にも別途会ったが、杉山も一定の理解は得られる、との感触を口にした。米側は内心で首をかしげた・・・

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