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スポーツ
朝日新聞社

台湾高校野球「木棒組」の衝撃 企業スポンサーにプロコーチも

初出:2013年12月19日〜2014年1月25日
WEB新書発売:2014年2月7日
朝日新聞

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 2013年12月、高校野球の富山県選抜チームが15年ぶりに台湾遠征を行った。現地の強豪校と5試合を行ったが、相手はいずれも木製バットを使用する「木棒組」。台湾の高校野球界では強豪校の代名詞でもある。慣れない木のバット、大リーグを理想とするスタイル、プロコーチが複数で行う指導、企業がスポンサーにもなる支援態勢……。日本とは大きく異なる台湾の高校野球を目の当たりにして、監督や選手たちは何を得たのか。

◇第1章 「木棒組」手厚い支援 企業が資金、プロの指導者
◇第2章 パワフル、大リーグ流 強い体作り 投手は分業制
◇第3章 心技体 広がる野球観 タフさ学び、互いに刺激
◇第4章 感じたパワー不足 刺激受け 県の底上げを
◇第5章 貪欲さ 刺激受けた 経験、チームで生かして


第1章 「木棒組」手厚い支援 企業が資金、プロの指導者

 2013年12月の県選抜チームの台湾遠征。5試合のうち4試合で、選手たちが握ったバットは、日頃日本の選手が使い慣れている金属製ではなく木製だった。



 実は、台湾の高校野球の強豪校が使うバットは、木製が主流。金属製を使う学校と区別し、木製を使う学校は「木棒組」と呼ばれる。
 台湾の高校495校のうち、野球チームのある学校は約90。このうち、木棒組は約40校だ。県選抜チームが対戦した5校は全て木棒組だったが、最初の1試合だけ金属製で行われた。
 木棒組の学校は、野球に力を入れている所が多い。チームは、行政機関や学校の保護者で作る「応援会」から資金援助を受け、中には、企業がスポンサーになるケースもある。支援態勢が日本とは随分と異なる。
 県選抜チームが5戦目で敗れた新北市の私立・穀保家商も手厚い支援を受ける一つ。台湾で13年行われた18歳以下の世界選手権の代表選手を擁する強豪で、蔡明堂監督(55)がオーナーを務める建設会社が全面的に支援している。
 木製と金属製の2グループで計約40人いる選手全員の学費や寮費に加え、用具費や遠征費も全て、この建設会社が負担する。大会の成績次第では奨学金が出ることもあるという。
 年間予算は約2100万円になるが、蔡監督は「相応の環境を用意するのが当然。自分の出来る範囲で良い環境を作ってやりたい」と意に介さない。
 木棒組の約8割は私立だが、13年の全台湾の大会(木棒組のみ対象)で優勝した桃園県の平鎮高中は公立だ。予算は年間1200万円。藍文成コーチ(51)は「施設やコーチが充実しているので各地から良い選手が集まる」と話す。
 両校のような強豪ではプロのコーチも雇い、その報酬にも費用がかかる。平鎮高中では投手、打撃、守備、体力の4コーチが指導に当たる。
◎「甲子園」モデル
 13年、大きな転機があった。実力差があるとされる、木棒組とそれ以外の垣根を取り払い、希望校が参加できる「混合」の全国大会が企画された。
 その名も「黒豹旗全国高中棒球大会」。51校が参加し、13年12月から14年1月にかけて開催され、平鎮高中がこの大会でも優勝を飾った。
 モデルになったのは日本の甲子園大会だ。主催する中華民国棒球協会の林宗成秘書長(57)は「全ての高校生に同じ舞台に立ってもらいたかった。勝つためだけでなく、試合に出られる楽しみを得られたと思う」。全試合がテレビで生中継され、選手は黒豹をモチーフにした大会のロゴマークを腕につけて試合に臨んだ。
 台湾での更なる普及を目指す中で、黒豹旗はその契機として期待される。林秘書長は、全国から応援が集まり、代表校と地域が一体になる甲子園の在り方を念頭に置いているといい、「まねするのは難しいが、参加校を増やして100年続く大会にしたい・・・

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