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朝日新聞社

プロメテウスの罠〔44〕 内部告発者「それが原子力ビジネスのやり方」

初出:2014年3月4日〜4月1日
WEB新書発売:2014年4月11日
朝日新聞

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 1号機原子炉内の蒸気乾燥器に、6カ所ひび割れがある。東電とGEは隠している――1989年の定期点検で福島原発1号機を検査した米GE社の技術者が2000年、日本の通産相(現・経産省)に手紙で内部告発した。これがきっかけで2年後、東電の13原発で29件のトラブル隠しが発覚。福島県と新潟県は全原発を止めた。他方、米国でも76年に福島と同型の原発の欠陥を内部告発してGE社を辞めた技術者がいた。福島原発事故と接点をもつ米国の内部告白者と福島の友人らの足跡を丁寧に追い、日米原子力業界の隠蔽体質と不誠実がもたらした悲劇の本質と課題を探る。

◇第1章 隠蔽相次いで発覚
◇第2章 17基すべて止まった
◇第3章 認められた正義
◇第4章 福島が反旗を翻した
◇第5章 あおられた電力危機
◇第6章 福島は第二の故郷
◇第7章 故郷が核の最前線
◇第8章 面白いやつがいる
◇第9章 日本人意識と誇り
◇第10章 消された「ひび割れ」
◇第11章 万一のときの切り札
◇第12章 尊敬する親友のため
◇第13章 津波の音が響いた
◇第14章 マーク1型の欠点
◇第15章 ベルボーイのひと言
◇第16章 身の危険を感じた
◇第17章 隠蔽体質を証言
◇第18章 水が止まれば終わり
◇第19章 「ごめんね」の重み
◇第20章 「仕事と友情は別だ」
◇第21章 不誠実、変わらない
◇第22章 ここに住んで下さい
◇第23章 100年後の帰還夢見て
◇第24章 社会と乖離した「村」
◇第25章 原子力工学科卒の夢
◇第26章 致命傷防げた可能性
◇第27章 GEは口をつぐんだ
◇第28章 地元にも責任がある
◇第29章 声上げ続けていれば


第1章 隠蔽相次いで発覚

 2002年8月に発覚した「東電原発ひび割れ隠し事件」。
 事件を明るみに出したのは、米国の原子炉メーカー、ゼネラル・エレクトリック社(GE)の1人の社員による内部告発だった。
 00年7月3日、1通の英文の手紙が霞が関の通産省に届いた。
 東京電力福島第一原発1号機の原子炉内の装置に6カ所にわたってひび割れが入っている。それを東電とGEとで隠蔽(いんぺい)している――。
 手紙は資源エネルギー庁の原子力発電安全管理課あてで、差出人はケイ・スガオカとある。
 1989年に1号機を検査したGEの技術者だった。
 「私は1号機の蒸気乾燥器を目視検査していました。ひび割れが見つかり、東京電力は巨額の費用で、これを新しいものに取り換える必要がありました」
 「巨額の費用」だけ太字だ。手紙には1号機の「目視検査報告」のデータシートが同封されていた。
 原子炉の圧力容器の中にある蒸気乾燥器の絵があり、右横のコメント欄に「ひび割れが観測された」と英語で書き込まれている。その数、6カ所。場所や長さも明確に記されている。
 「私は、たくさんの沸騰水型炉を検査してきましたが、ここまで傷ついた蒸気乾燥器は見たことがありませんでした」
 「しかし東電の依頼に基づくGE上層部の指示で、ひび割れが映らないように意図的に編集したビデオが通産省向けにつくられました」
 1号機を製造したGEは、その定期点検を東電から請け負っていた。そのGEと東電が共謀して原子炉内のひび割れを隠蔽(いんぺい)した――。
 そんなスキャンダルを内部告発する手紙だった。
 通産省は直ちに東電に問い合わせた。しかし「そのような事実はない」との回答が返ってくるばかりだ。
 スガオカの手紙に同封されていたデータシートの絵を突きつけた。
 それでも「当社は承知していない」との返事である。
 01年、原子力安全・保安院が発足した。保安院はGEに、調査への協力を依頼した。
 GEが記録を調べ直すと、02年に13の原発で、ひび割れをふくめて29件のトラブル隠蔽疑惑が見つかる。
 大騒ぎになった・・・

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