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朝日新聞社

東京五輪めざす若者たち 門限あり、文武両道エリート44人の夢は金メダル!

初出:2014年3月26日〜4月5日
WEB新書発売:2014年4月18日
朝日新聞

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 「先輩たちから、できることは全部吸収したい」。全国から選抜された44人の中高生が汗を流す。国が支援し、JOCが運営するスポーツエリート養成機関の選手らが夢見るのは、2020年東京五輪での金メダル。専任コーチ、栄養士常駐の食堂など恵まれた環境で技を磨くことができる一方、勉強も手を抜けず、全寮制寄宿舎での集団生活、門限、消灯時間など厳しい規制もある。ユース五輪日本代表の女子卓球選手、国内ジュニア部門1位のフェンシング選手ら、五輪出場を目指す悩み多き若者らの心身育成の現場を追う。

◇第1章 メダルへ、練習も勉強も
◇第2章 集団生活、音楽で心静めて
◇第3章 国際大会、自分の言葉で伝えたい
◇第4章 「金」で初めて泣いた選手が手本
◇第5章 先輩がいるから今がある
◇第6章 変わらなきゃ、強くなるため
◇第7章 ホームシック、こつこつ克服
◇第8章 重圧耐えぬき6年、後輩が続く


第1章 メダルへ、練習も勉強も

 6年後の2020年、東京オリンピックの表彰台で金メダルを首にかけてもらう――。14年3月5日、東京都北区の味の素ナショナルトレーニングセンター(NTC)。卓球の日本代表候補合宿に参加していた中学1年の平野美宇(みう)さん(13)が、練習の合間に笑顔を見せた。地元開催の五輪での優勝は、いま平野さんが描く最大の夢だ。
 「ちょうど20歳になるので、自分にとっていい時期。本当に出たい。みんなに応援してもらえるような選手になりたい」
 平野さんは、日本オリンピック委員会(JOC)が運営するエリートアカデミーに所属している。全国から各種スポーツの才能のある中高生選手を選抜し、全寮制で鍛える選手の養成機関だ。平野さんは小学校卒業と同時に13年4月に地元の山梨県中央市を離れて入った。
 両親ともに筑波大で主将だったという卓球一家。3歳からラケットを握り、小学1年生で全日本選手権バンビの部(小2以下)を制すと「もっと勝ちたいと思った」とのめり込んだ。世界ランキングは日本勢の女子で6番目となる49位(3月5日現在)につける。
    ◇
 当然、卓球を中心にした生活だ。NTCに近い寮から区内の中学校に通い、授業が終わるとNTCに戻って午後9時ごろまで練習。日曜日は練習は休みだが、大会や海外遠征などで2日しか休めない月もある。
 アカデミーの教育方針は「文武両道」。練習後、部屋に戻るころはくたくただが、のんびりしている暇はない。消灯時間の午後11時までにシャワーを浴び、洗濯機を回し、机に向かう。「自由時間がなくなるので勉強をサボってしまいそうになる」と頭をかく。
 一度に1週間から10日かかることもある海外遠征後は、「授業に追いつくのが大変」と苦笑いする。そこで頻繁に利用しているのが、自由参加の「学習会」だ。学校を休んだ分の補習などができるよう、アカデミーが週3回開いている。練習後に約2時間、家庭教師を招く。
 個別指導が受けられ、途中での入退室も認められている。平野さんも可能な限り1日10分、15分でも参加する。
 中学生の行動範囲はNTCを中心に最寄りの赤羽駅までの距離と決まっており、練習がない日でも遠出はできない。気分転換は、衣料品店で洋服を買ったり見て回ったりすることだ。外出できない時は部屋でファッション誌を眺める。「トリンドル玲奈ちゃんとかローラが好き」と気に入ったタレントのファッションをチェックする。
 お菓子作りや料理が大好き。ただ、寮には自分で調理できる場所がないため、家庭科の調理実習が待ち遠しい。
 アカデミーに入っても代表選手になれる保証はない。国から支援を受ける分、周囲の目は厳しく、「国内の大会は勝たないといけないと思うこともある」と話す。だが12年ロンドン五輪決勝を現地で観戦し、五輪出場への思いはいっそう強まった。「最近は精神的に強くなって、重圧も乗り越えられるようになってきた」と自分を語る・・・

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