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経済・雇用
朝日新聞社

世界のスマホから 日本人の知らない世界の「ケータイ」激変の一部始終

初出:2014年4月3日〜4月5日
WEB新書発売:2014年4月18日
朝日新聞

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 スマートフォンが世界の携帯電話市場を変えている。使い方が通話からデータ通信に移ったことで、通信業者に代わって、魅力あるサービスを生むアプリ業者が力をつけた。高速通信網の整備に巨額のカネがかかることになり、国境を越えた再編も広がる。SIMフリー化で一挙に価格破壊が進んだフランス、タクシーを呼ぶスマホアプリが爆発的な人気を呼ぶ中国、孫正義率いるソフトバンクが台風の目となるアメリカなど、激変する世界の携帯電話市場。そのホットな姿を緊急レポートする。

◇第1章 携帯、カードだけ売る/欧州で格安プラン競争激化
◇第2章 13億人、アプリ革命/財布代わり・無料通話、中国に普及
◇第3章 高速通信、進む世界統一/米の会社、国境超え再編の動き


第1章 携帯、カードだけ売る/欧州で格安プラン競争激化

 フランスの携帯電話業界で、「価格破壊」がじわりと進んでいる。
 火付け役は、2012年に参入した「フリー・モバイル」。端末に差し込んで通信に使う「SIM(シム)カード」を単独で販売するスタイルで、一気に契約者を増やした。かつてのフランスは、日本と同じく、契約時に端末の購入と2年間の継続利用が前提だった。フリーは、そんな業界の慣習を打ち破った。
 電話番号情報などが記録された同社のSIMカードは月2ユーロ(約280円)から利用できる。月19・99ユーロ(約2800円)の「格安プラン」は話し放題で、データ通信も容量3〜20ギガバイトまで使える。北部リールに住むジャーナリスト、アリス・ルージュリーさん(27)は2年前、携帯最大手のオレンジからフリーに乗り換えた。それまでは「月30ユーロ(約4200円)で通話2時間」というプランだった。「高い契約をやめられて、うれしかった」
 フリーの親会社・イリアドは、家庭向けインターネット回線で価格破壊を起こした革命児的な存在として知られる。そのDNAを受け継いだフリーは設備を工夫し、販売もネット中心にするなどして、低価格を実現させた。
 フリーの台頭を機に他社も料金プランを相次いで変更し、同国で2年契約をする携帯利用者は全体の8割から4割に急減した。仏政府の電子通信・郵便規制機関(ARCEP〈アルセップ〉)のフィリップ・ディストレー理事は「消費者は選択肢が広がり、大きな自由を得た」と話す。


 消費者には心地よい「価格破壊」だが、携帯業界にとっては逆風だ。13年7〜9月期の携帯市場の売上高は12年同期より約14%も減少。収益が悪化した業界2位のSFRは親会社が売却を決断。3位のブイグなどが買収に名乗りを上げ、業界地図を塗り替える大合併の動きが浮上している。
 SIMカードのサービス競争は、フランスにとどまらない。欧州の社会はもともと移民が多く、生活格差も大きい。長期契約に縛られたくなかったり、通信速度よりも低料金を優先したりする人は多い。
 ドイツの中核都市・デュッセルドルフ。駅前の携帯ショップには壁一面にSIMカードが並ぶ。英ボーダフォンやスペインのテレフォニカなど携帯大手だけでなく・・・

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