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朝日新聞社

どうして家族になれないの 時代遅れの法律が妨げる多様な家族のかたち

初出:2014年4月2日〜4月4日
WEB新書発売:2014年4月18日
朝日新聞

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 互いの姓を尊重するため夫婦別姓を選ぶなど、婚姻届を出さずに暮らす事実婚の夫婦は少なくない。しかし、行政の助成や手術のサインなど、事実婚では夫婦と認められない場面に直面し、選択した家族の姿をあきらめる人たちがいる。また、婚外子(非嫡出子)を生んだ母が、制度のひずみのために自分の子との養子縁組を強いられる事例や、実父であるにも関わらず、離婚から300日以内に出産した子は離婚前の配偶者の子と推定する規定のため、自分の子を自分の戸籍に入れられない父もいる。「300日」には科学的根拠がないにもかからわず……。結婚や性に対する考え方が多様化するなか、法律がその変化に対応できていない例があちこちに見られるようになった。そんな法や社会の壁について考えてみた。

◇第1章 私が産んだのに「養母」って?
◇第2章 不妊助成、事実婚は枠の外
◇第3章 多様性、支えたい


第1章 私が産んだのに「養母」って?

◎戸籍上「嫡出子」とするため縁組
 「私が産んだ子なのに……」
 長男(9)の戸籍には、自分の名が「養母」として書かれている。「納得いかない」と、沖縄県豊見城(とみぐすく)市の女性(38)は言う。
 未婚で長男を出産した。婚外子(非嫡出子)として出生届を出した。戸籍の父欄は空白となり、母欄には女性の名があった。
 約1年後、女性は長男の父親とは別の男性と結婚した。長男を、結婚している夫婦の子(嫡出子)とするには、養子縁組が必要だ。その男性だけでなく女性も、実子である長男と養子縁組しなければならないと市役所から説明を受けた。「実の母なのは分かりますが、養子縁組は夫婦で」と。
 理由は民法795条。配偶者の子が非嫡出子の場合、「養子とするには、配偶者とともにしなければならない」と定める。長男を男性が養子にするには、配偶者である女性とともにしなければならないということだ。法務省によると、母親が結婚しても子どもの非嫡出子という身分は変わらないため、嫡出子とするために夫婦での養子縁組が必要になるという。
 2013年12月まで非嫡出子の遺産相続は嫡出子の2分の1という民法の規定があり、養子縁組で嫡出子としなければ不利益があった。だが実母の立場から見ると、違和感がつきまとう。「養母」として女性の名が記される一方、「母」欄にも女性の名は残った。
 その後、次男(7)が生まれたが、酒浸りで仕事もしなかった男性との結婚生活は2年で終わった。
 その3年後に再婚し、夫は2人の子どもと養子縁組した。次男は前夫との間の嫡出子のため、非嫡出子だった長男のように実母である女性と養子縁組する必要はなかった。だから戸籍上も「母」。一方、長男とは「養母」のままだ。
 非嫡出子の相続規定は最高裁が13年、「法の下の平等を定めた憲法に違反する」と判断。民法が改正され、規定は撤廃された。ただ今も、「養母」にならなければ夫と共同親権者になれない。
 女性は言う。「子どもは戸籍のことをまだ知らない。大人になって見た時、どう思うだろうか・・・

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