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経済・雇用
朝日新聞社

欧州が「日本化」する日 ユーロ圏は死のスパイラルを阻止できるか

初出:2014年3月23日、30日
WEB新書発売:2014年4月18日
朝日新聞

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 2009年10月、ギリシャの財政赤字隠し発覚に端を発した欧州債務危機は、ギリシャに続きアイルランド、ポーランドに飛び火し、経済規模の小さな国々を、次々に混乱に陥れた。それから4年の月日が流れたが、欧州はいまだにその傷跡を癒せていない。ユーロ圏は13年4〜6月、7四半期ぶりにマイナス成長から脱したが、回復ペースは遅く、失業率は12%と高止まり、何よりも心配されるのが、消費者物価指数の上昇率が1%を切り、デフレが止まらなくなる「日本化」が心配されていることだ。銀行預金への課税までが検討されたキプロスの事例を振り返り、欧州「日本化」のシナリオを読み解く緊迫のレポート。

◇第1章 実験台になった小国
◇第2章 政府、もう頼れない


第1章 実験台になった小国

◎キプロスの教訓
 2014年2月下旬、首都ニコシアで開業したのは、ネット上で流通する仮想通貨ビットコインを扱う「リアル店舗」だ。開業からの5日間で200人以上が「財布」をつくった。運営会社「Neo & Bee」の最高経営責任者(CEO)ダニー・ブルースター(27)は「昨年3月の経験から、キプロスの人は他のどこの人よりも、自分のお金を守ることに敏感になった」と説明する。
 「昨年3月の経験」とは、キプロスでの銀行の取り付け騒ぎのことだ。金融危機に陥ったキプロスに支援する条件として、「銀行預金者への課税」を求められたのがきっかけだった。
 「安全だと思って自分のお金を銀行に預けていたのに、その口座から政府が勝手に税金を差し引く」――。予想もしていなかった事態に、預金者は銀行に殺到。ATMの現金が底をつき、引き出しは制限され、銀行は約2週間も休業に追い込まれた。キプロスの銀行では預金引き出しが1日300ユーロ(約4万2300円)に制限されるなど資本規制は今も続く。
 だからこそ、ビットコインにお金を移す人が後を絶たない。キプロスでのビットコインの隆盛は、銀行システムへの強烈な不信の裏返しだ。
 なぜ、キプロスはそんな事態に追い込まれたのか。
 13年の3月、当時のキプロス財務相ミハリス・サリス(67)は、瀬戸際に立たされていた。
 ブリュッセルでのユーロ圏財務相会合は、危機に陥ったキプロスに欧州連合(EU)と国際通貨基金(IMF)がどう支援するかを話し合っていた。
 会議室の机を囲み、15日午後6時から始まった議論は、午前0時をすぎてもまとまらなかった。
 ユーロ圏の財務相たちは、キプロス側も責任をとることを求めていた。急先鋒(きゅうせんぽう)は、13年9月に総選挙を控えるドイツだった。
 サリスは拒否を続け、時間だけがじりじりと過ぎていく。未明の議論で、閣僚たちにも疲労といらだちの色が濃くなっていった。サリスはこう振り返る。「私たちに与えられた選択肢は明確なものだった。『受け入れるか』、『さもなくばユーロ圏から去るか・・・

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