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経済・雇用
朝日新聞社

駄菓子をかみしめる幸せ 世代を超えて愛される駄菓子屋の意外な役割

初出:2014年4月5日〜4月10日
WEB新書発売:2014年4月25日
朝日新聞

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 桜餅を連想させるサクランボ味の「餅あめ」、手作業の職人技が見事な「組みあめ」、個性的な「八丁味みそ味のキャラメル」など、「安くて、楽しくて、おいしい」駄菓子の一大生産地、愛知。こだわりの味を追究する生産者が多い一方、後継者不足などで廃業する駄菓子屋も増えている。高齢者と子どもたちが出会う駄菓子屋の存在意義とは何か。通販サイト「キャラメル横町」、「駄菓子文学賞」の狙いはどこにあるのか。「消費者を笑顔にするのが駄菓子の使命」と、駄菓子文化の継承に取り組む熱い人々を紹介する。

◇第1章 共親製菓/「安く楽しい」信念、守る
◇第2章 駄菓子屋「紙ふうせん」/看板娘、子供たち待つ
◇第3章 マルホ/作り手見える「横町」
◇第4章 安部製菓/先へ先へ、湧くアイデア
◇第5章 浅野製菓/組みあめ技術、伝えたい
◇第6章 子の成長に有意義/加藤理・文教大教授に聞く


第1章 共親製菓/「安く楽しい」信念、守る

◎餅あめ、世代を超え定番に
 色鮮やかなピンクや緑に染められた1センチ四方のつぶつぶが、プラスチック製の型枠に丁寧に並べられていく。幼い子どもでも食べやすいように、袋の中につまようじを添える優しさも忘れない。
 もちもちとした食感の「餅あめ」だ。名古屋市西区の駄菓子メーカー「共親製菓」が、1979年から売り続けてきた。発売当時から変わらない定番の味は「さくらんぼ」と「青リンゴ」。特にさくらんぼは、「見た目が可愛らしく、桜餅を連想させる」という理由で最初の味に選ばれたと、2代目社長の安部隆三さん(61)は振り返る。
 今では「ぶどう」や「コーラ」など8種類に広がった。1袋税抜き30円の低価格商品は、全国の駄菓子屋で根強い人気を誇る。
 47年の創業当初はキャラメルなどを作っていたが、近隣他社との差別化を図るため、餅あめを始めることを思いついた。
 安部社長にとって「安くて楽しく、おいしいもの」が駄菓子だ。常に消費者の目線に立ち、作業工程での妥協は許さない。こうした信念が人気を支える隠し味になっている。
 同社の駄菓子は、中学生以下の子どもが約9割を消費する傾向があるという。「時代の流れよりも、世代を優先してフォローする」。極めてシンプルな戦略で競争を生き抜いてきた。
 苦しい時もある。原材料の高騰など物価上昇の波にのまれた15年前、餅あめの価格を10円値上げした。それでも信念の「消費者目線」にこだわり、内容量を2割増すなど消費者の負担軽減に努力したつもりだ。
 餅あめはロングセラーに成長した。「古くからある駄菓子は、固定ファンが多い。親から子へ、そして孫へしっかりと受け継がれている」と、業界紙「食品産業新報社」(名古屋市西区)の藤山寿樹社長(53)は評価する。
 全国屈指の駄菓子生産地の県内でも、生産者を取り巻く環境は厳しい。市内にあった餅あめ生産会社は3社に半減。後継者不足も大きな要因の一つだ。
 同社には、安部さんの長男隆博さん(28)が4年前に入社した。専務として新商品開発に力を入れる。餅あめのパッケージを「iPhone(アイフォーン)」に見立てた「たべプリ」は隆博さんのアイデアだ。2013年8月の発売以来、売り上げを伸ばしている。
 大切にしてきた信念に、後継者の次世代感覚が加わった。安部社長は「安くて楽しく、おいしいという駄菓子文化を、息子よりも先の世代に申し送ることが使命です」と意気込む・・・

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