【お知らせ】WEB新書は閉店しました。

経済・雇用
朝日新聞社

「負担増時代」の到来! 鬼門・消費増税は安倍政権と家計の命運を左右する?

初出:2014年3月19日〜4月5日
WEB新書発売:2014年4月25日
朝日新聞

このエントリーをはてなブックマークに追加

 消費税率が5%から8%にアップした。その結果、2014年度の家計は国民一人平均で約5万円の負担増になるという。さらに、景気の動向を見て10%に再増税する。こんな「負担増時代」に、国民はどう向き合えばよいのか。一方、政府は低・中所得者に給付金を与えて消費を促し、各企業・店舗はいかに消費者に値上げ感を与えずに増税分を転嫁するか知恵を絞る。交通運賃から外食産業、住宅、医療に至るまで、消費税アップで変わるもの、変わらぬものを具体的に示し、安倍政権と景気と家計の今後を探る。

◇第1章 値上げ、何がどう変わる?
◇第2章 電子マネーの利用が増えそうなの?
◇第3章 「駆け込み」→「買い控え」で景気は?
◇第4章 増税なのに値下げする外食店もあるの?
◇第5章 百円玉ビジネス、価格据え置くの?
◇第6章 住宅はお買い得になることも?
◇第7章 負担増、年金・医療でもあるの?
◇第8章 「退陣ジンクス」、安倍政権は破れるか
◇第9章 「転嫁カルテル」ってどんな仕組み?
◇第10章 低・中所得の人にお金を配るの?
◇第11章 「10%」条件の経済好転、どう判断?


第1章 値上げ、何がどう変わる?

◎運賃や自販機など複雑に
 消費税は、価格に上乗せされた税金分をまず消費者が支払い、お金を預かったお店などが税務署に納税するしくみだ。このため、店側は原則、増税分を価格に乗せる「転嫁」に踏み切る。たとえば「100円ショップ」や「100円回転ずし」の値段は、105円から108円に上がる。
 複雑なのは運賃や自動販売機など、10円・100円単位で決まってきた価格だ。首都圏の鉄道運賃は、「スイカ」などのICカードを使う場合は正確に1円刻みで3%分値上げする一方、切符の運賃は10円単位という「二重価格」になる。例えば、JR東京―横浜間(現在450円)は、ICカードだと464円、切符だと470円になる。一方で、首都圏以外の多くの地域では、切符でもICカードでも10円刻みの同じ運賃となる。
 10円値上げすると取りすぎになる自販機では、炭酸飲料「コカ・コーラ」(350ミリリットル缶)は120円から130円に16年ぶりに値上げする一方、天然水「い・ろ・は・す」は価格を据え置く。茶飲料「綾鷹」は内容量を500ミリリットルから525ミリリットルに増やして150円から160円にする。自販機全体で増税分を調整するという考え方だ。
 価格表示も変わる。転嫁しやすいよう「税抜き」表示が2013年秋から認められた。すでに税抜き価格で表示し、レジでまとめて消費税を上乗せしている大手スーパーなどもある。



◎売る側の対応は?/料金に工夫。据え置きも
 増税分をそのまま上乗せすると客足が減りかねない。「値上げ」を感じさせずに、どう増税分を転嫁するか。売る側にとっては知恵の絞りどころだ。
 複合映画館を展開する「TOHOシネマズ」は、大人1800円などの基本料金は据え置く代わりに、シニア向けの割引料金などを100円値上げする。
 コインパーキング大手の「パーク24」は、駐車場ごとに、たとえば昼間の料金は据え置き、「12時間まで1500円」の深夜料金を100円値上げするなどして、全体で3%分を上乗せするという。細かい値上げが難しいゲームセンター業界では「100円より200円のゲームに誘導する工夫などで補いたい」(大手)という企業もある。
 安さが売りのプライベートブランド(PB)商品などでは価格据え置きの動きも。イオンはPB「トップバリュ」の約6千品目のうち大半の価格を据え置く。生活雑貨店「無印良品」も、商品全体の約75%は据え置くという。税負担分は物流コスト削減などの企業努力で補う考えだ。
 これまで激しい価格競争を繰り広げてきた牛丼チェーン大手は、対応がくっきり分かれた。「すき家」は、増税で消費者の節約意識が高まるとみて、看板商品の牛丼(並盛り)を280円から270円に10円値下げに踏み切る。これに対し「吉野家」は、並盛りを300円に20円値上げし「肉などの品質を高める」という。「松屋」は290円に10円値上げする。

◎非課税のものは?/ややこしい「線引き」
 もともと、消費税がかからないモノやサービスもある。例えば土地の売買。「土地は消滅せず、消費にあたらない」と財務省は説明する。新築物件を購入する場合、建物は課税、土地は非課税となる。
 生命保険や損害保険の保険料も「消費税にそぐわない」と非課税。図書カードなどの金券が非課税なのは「消費税は図書カードで本を買うときにかかる。カードの購入時にも課税すると二重払いになる」(三木義一・青山学院大教授)ためだ。
 一方、社会政策として非課税なのは住宅や医療、教育などの分野だ。
 現在は非課税の家賃、助産費用、火葬料、学校の入学金などは、1989年の消費税導入当初は3%の消費税がかけられていた。ところが、同年の参院選で自民党が大敗し参院は与党が過半数割れに。社会党など当時の野党が提出した「消費税廃止法案」が参院で可決するなど、消費税への批判が強まったため、当時の海部内閣は、くらしに配慮して課税対象を絞り込む見直しを迫られた。こうした「政治判断」により、91年の消費税法改正で家賃などが非課税になった経緯がある。
 ただ、課税と非課税の「線引き」はややこしい。家賃で非課税なのは、「居住用」のみで、店舗など「事業用」は課税。医療では、健康保険の対象となる診療や処方薬は非課税だが、美容整形や人間ドック、市販薬は課税。葬儀関係では火葬料と埋葬料、墓の永代使用料は非課税で、祭壇や棺、位牌(いはい)、墓石は課税だ・・・

このページのトップに戻る