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政治・国際
朝日新聞社

核ミサイル迎撃は可能か 集団的自衛権が行使される「有事」を想定する

初出:2014年4月4日〜10日
WEB新書発売:2014年4月25日
朝日新聞

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 安倍首相が強調する集団的自衛権行使と改憲の意義とは何か。例えば北朝鮮が米国をミサイル攻撃した場合、100キロ超の上空を高速で飛ぶ弾道ミサイルを日本の自衛艦が迎撃するという。だが戦争なら同時に、日本の米軍基地や原発も狙われ、国土が火の海になるかもしれない。そのとき「集団的自衛権で米国を守る議論に意味はあるのか」。北朝鮮の暴走、ペルシャ湾の海峡封鎖、尖閣・南シナ海での中国との衝突など、想定される三つの「有事」を具体的に検証し、絵空事では済まない日本のとるべき道を探る。

◇第1章 行使容認、三つの想定
◇第2章 北朝鮮ミサイル、こだわる首相
◇第3章 「米を援護」義理と想像の産物
◇第4章 武器使用緩和も憲法解釈で
◇第5章 武装漁民上陸「対処にすき間」?


第1章 行使容認、三つの想定

ケース1 ペルシャ湾
 〈20××年、中東のA国は主要各国の経済制裁に対抗するため、原油輸送などの海上交通路(シーレーン)であるペルシャ湾の海峡に機雷を敷設し、海上封鎖をした。米国は同盟国などと多国籍軍を結成。日本には集団的自衛権の行使を求め、機雷除去を要請した〉

◎戦闘中も機雷除去
 安倍内閣は2013年10月、集団的自衛権の行使容認に向けた議論を続けている安保法制懇に対し、次のような想定事例を示した。
 日本が輸入する原油の大部分が通過する重要な海峡で武力攻撃が発生し、攻撃を仕掛けた国が敷設した機雷で海上交通路が封鎖されれば、原油供給の大部分が止まる。放置すれば、国の存立に影響を与えることにならないか――。
 複数の政府関係者によると、安倍内閣が集団的自衛権行使の一例として念頭に置くのは、日本の輸入原油量の8割が通過するペルシャ湾・ホルムズ海峡が封鎖されたケースだ。実際、イランは核開発問題などで国際的な緊張が高まるたび、最も狭い場所で幅34キロしかない海峡の封鎖を再三示唆してきた経緯がある。
 海上自衛隊は12年から米海軍がペルシャ湾で行っている「国際掃海訓練」に参加し、掃海能力の高さを示している。仮に湾岸のある国が機雷で海上封鎖をした場合、米国が日本に掃海を求める可能性は十分にあるという。
 しかし、機雷を除去することは武力行使にあたる。集団的自衛権の行使を認めない今の憲法解釈では、戦争後も残る機雷を「遺棄物」とみなすことで、日本の海自による除去が可能になる。1991年の湾岸戦争でも日本は停戦後に海自をペルシャ湾に派遣し、イラクの機雷を除去した。
 集団的自衛権の行使を認めれば、戦闘中でも日本は機雷を除去できるようになる。ただそれは、戦争に加わることにほかならない。防衛省幹部は「集団的自衛権の行使とは、米国と一緒に他国と戦争をすることだ」と言い切る。



ケース2 朝鮮半島
 〈20××年、北朝鮮は韓国をミサイルなどで攻撃した。韓国は反撃を開始し、両国は戦争状態となった。同盟国の米国も相互防衛条約に基づいて参戦。米国は安全保障条約を結んでいる日本の支援を得るため、韓国と協議。韓国は日本に対し、集団的自衛権の行使を要請してきた〉

◎米艦と一緒に反撃
 「朝鮮半島が厳しい情勢になったとき、ミサイルが発射されるかもしれないという可能性があるなか、米国の艦艇に対する攻撃を(日本の)自衛艦が阻止できなくていいのか」
 安倍首相は14年2月10日の国会答弁で、朝鮮半島が戦争状態となる「有事」を念頭に、集団的自衛権の行使が必要になると訴えた。
 1999年に成立した周辺事態法は、朝鮮半島の有事を想定した米軍への後方支援を定めた。ただ、今の憲法解釈では、自衛隊が他国の戦闘行為に直接関与する「武力行使との一体化」を禁じている。このため同法は「そのまま放置すれば、我が国に対する直接の武力攻撃に至るおそれのある事態」が起きた場合に限り、現在の憲法解釈の枠内で自衛隊が米軍を後方支援する補給や輸送、医療といった項目を定めた。
 安保法制懇の北岡伸一座長代理は周辺事態法では不十分とする理由の一つに、米艦艇への補給が日本の領海内などに限られ、「前線」に近い公海上では原則認められていない点を挙げる。「日本は米艦を助けられないどころか、補給もできない。それでいいのか」
 集団的自衛権の行使が認められれば、「武力行使との一体化」を禁じた憲法上の制約は解かれる。自衛隊の艦艇が公海上で米軍艦艇に補給ができるようになるだけでなく、首相が主張するように、米艦が攻撃を受けた際には、近くの自衛艦が一緒に反撃することも可能になる。
 では、もし朝鮮半島で戦争が起きた時、日本はどこまで関わることになるのか。安倍内閣は、行使容認に際し、原則として他国の領土・領海・領空には自衛隊を派遣しない考えだ。
 しかし、政権内には「戦況次第で韓国から強く求められれば、自衛隊が朝鮮半島に上陸することもあり得る・・・

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