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朝日新聞社

累犯障害者・高齢者 悪いと思ってもやめられない心に手をどう差し伸べるか

初出:2013年11月17日〜2014年4月12日
WEB新書発売:2014年4月25日
朝日新聞

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 窃盗や無銭飲食を繰り返してしまう累犯障害者・高齢者が各地で問題となっている。こうした人々が容疑者や被告となったときに、福祉の観点から支援し、社会復帰を目指す取り組みが進んでいる。逮捕や起訴の段階で検事や弁護士、社会福祉士が働きかけ、刑務所ではなく福祉施設からの社会復帰を試みる「入り口支援」、受刑者が出所後に健全な社会生活ができるよう、社会福祉士などが就職あっせんや受け入れ先の調整をする「出口支援」の二本立てのサポートである。実際の支援の中身やその効果をレポートする。

◇会話出来ず 人の気持ち分からなかった
◇仲間といて寂しくないから盗まない
◇生活のゆがみが犯罪を生む
◇〈北海道〉高齢者再犯防止 刑罰より福祉で
◇〈長野県〉「認知症で盗む認識なし」
◇〈神奈川県〉盗みに走る高齢者


会話出来ず 人の気持ち分からなかった

 2013年6月、石川県金沢市内で20代の女性宅に侵入し下着を盗もうとしたとして、20代男性が住居侵入未遂の疑いで県警に逮捕された。
 男性は少年の頃から窃盗を繰り返してきたという。少年院には2度入った。12年9月、2度目に入った愛知県の少年院から出所した。その後、運送会社で働き始めたが、2カ月ほどで辞めた。「仕事の話があまり理解できなかった。上司や同僚から嫌われているようにも感じていた」と当時のことを語る。
 もともと対人関係が苦手だった。相手や周囲との会話にあまりついていけない。特に長く話すと頭が働かなくなる。だからなのか、友人と呼べる人もいなかった。ただ、自分に知的障害があるとは思ってもいなかった。
 運送会社を辞めた後は、金沢市内で解体作業の仕事についた。片町の繁華街で客引きをしたこともある。
 6月に逮捕された後、窃盗や住居侵入などの罪で起訴された。
     ◇
 勾留中に接見した国選弁護士は、男性とのやり取りのなかで違和感を覚えたという。弁護士はすぐに県の知的障害者更生相談所の職員に連絡をとった。約2時間、知能検査をしたところ、読み書きや計算など、日常生活に支障がある「精神遅滞」と診断された。
 知的障害者などに交付される「療育手帳」は持っていなかったため、「刑務所に入れるよりも適切な更生支援があるはず」と弁護士の働きかけを受けて、勾留中に県から手帳が発行された。手帳を持っていると、障害の程度によって違いはあるが、税制上の優遇や電車賃の割引などが適用されるなど、さまざまな福祉サ―ビスが受けられる。
 13年12月上旬、金沢地裁は「精神遅滞が犯行に一定程度影響を反映している可能性が否定できない」として、この男性に執行猶予付き判決を言い渡した。公判には、相談支援専門員が証人として出廷した。今後の支援体制が整っていることも考慮された。
 「犯罪で人の感情を傷つけていた。会話ができないから、人の気持ちを考えることができなかった」。男性は振り返る。人との距離感が分からなかった。「だから、ずっと1人だった・・・

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