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社会・メディア
朝日新聞社

なぜ、お金に振り回されるのか 天国も地獄も生み出すモノの正体

初出:2014年3月11日〜4月16日
WEB新書発売:2014年5月2日
朝日新聞

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 なぜギャンブルにハマってしまうのか。なぜビットコインは信用できないのか。なぜ人生の後悔はすべてお金でつながるのか。なぜ借金で死ななければならないのか。なぜ新人の野球選手に莫大な契約金が支払われるのか。なぜ大富豪は幸せに見えないのか。でもお金にとらわれずに生きられる人もいる。何度も詐欺に遭ってしまうのはなぜか。株主優待で生活するのはなぜか。外資系企業の報酬がいいのはなぜか。人生の95%はお金の問題なのはなぜか。メリーさんはなぜ、横浜に居続けたのだろう。「お金の人間学」にまつわる12の物語。

◇第1章 借金で崖っぷちの恐怖
◇第2章 「円」もビットコインも同じ
◇第3章 人生の後悔、つながった
◇第4章 「払います」叫んだ社長の命
◇第5章 夢破れて知る、稼ぐ厳しさ
◇第6章 幸せに見えなかった大富豪
◇第7章 将来をみだりに恐れない
◇第8章 確かな知識が被害を防ぐ
◇第9章 幸せ探して、株に夢中
◇第10章 「お金より実務家」忠誠誓う
◇第11章 時には身の丈以上の買い物
◇第12章 白塗りメーク、生き抜いた


第1章 借金で崖っぷちの恐怖

俳優/六角精児さん

 40歳を過ぎるころまでお金で苦労してきました。もう完済しましたが、サラ金(消費者金融)から一時500万円弱の借金がありました。サラ金ばかり入っていたビルの上から下まで全ての店から借りていました。友人や家族からの借金をあわせると、最高で1千万円ぐらいありました。
 原因はギャンブルです。子供のころから射幸心をあおるものが大好きでドキドキしながら駄菓子屋のくじ引きをしました。大学でパチンコにはまり、月に30万円近く持っていかれ、学生ローンで80万円の借金をしてしまった。
 僕は「ギャンブル依存症」でした。ギャンブルに勝って、負けたカネを取り返すことばかりを考えていた。カネの亡者でした。正常な判断ができない。冷静に考えれば、借金でやるギャンブルなんて絶対に勝てないですよ。
 パチンコ店で見かけた中には、孤独で追い詰められた顔をしている人もいました。カネに惑わされ、人格まで支配されてしまった顔。居酒屋を1カ月以上閉めたまま、朝から晩までパチンコをしていたおやじは、店が差し押さえられた日も打ち続けていました。やがて、ひっそりと姿を消しました。
 560円で2週間生活したこともあります。舞台の最中は芝居に没入することで借金を忘れます。終わると「助けてくれ」と叫びたくなる現実が襲ってくる。そんな毎日でした。
 50歳で初めてクレジットカードの審査に通りました。融資可能枠はゼロです。分割払いは絶対にしません。高い利息を払いたくないから。ずっと苦しんできたから、金利が憎い。
 僕は本当に運が良かった。友人や肉親から見捨てられなかった。役者として一応芽が出て、借金を自力で返せた。いつも崖っぷちにいました。ぎりぎりの経験は確かに芸の肥やしになりましたが、結果論に過ぎません。
 パチンコや消費者金融のテレビCMがお茶の間に流れていたり、東京でカジノ解禁を目指したりする風潮に強い違和感を覚えます。依存症の恐怖と、その背後に隠れている借金の恐ろしさについての認識が欠如しています。
 数年前、以前別れた女性と再び結婚しました。実は結婚は4度目なんです。今でもギャンブルをします。しかし、自分で稼いだお金の範囲内にとどめています。もう家庭を壊すようなことは絶対にしたくない。かといって貯金に励むつもりもありませんが、役者として生きていくためのお金を地道に稼いでいければ、と思っています・・・

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