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政治・国際
朝日新聞社

8億人の選択 世界最大の民主主義国・インド総選挙のゆくえはどうなるか

初出:2014年4月13日〜4月19日
WEB新書発売:2014年5月2日
朝日新聞

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 約8億人の有権者を抱え、「世界最大の民主主義国家」と呼ばれるインド。2014年4月7日から始まり、一カ月以上にわたって投票が続く総選挙の行方が、全世界から注目を集めている。5月16日の開票で、10年ぶりの政権復帰が予想されている最大野党・BJP(インド人民党)が、タカ派的な軍事・外交政策、イスラム教徒への敵対的な姿勢で知られており、経常赤字からくる物価高騰など、経済情勢も予断を許さないからだ。年間の所得が5千ドル(約50万円)を下回る低所得層が総人口の8割を占めるなど、経済成長の影に隠れた貧困問題も深刻だ。総選挙後のインド政治の課題を見通すルポ。

◇第1章 風前の核先制不使用/政権狙う野党「原則見直す」
◇第2章 繁栄の陰、イスラム受難
◇第3章 景気低迷、タマネギ高騰
◇第4章 劣勢の与党、「血筋」頼み
◇第5章 脱腐敗へ、庶民党の挑戦
◇第6章 自殺止まらぬ貧困農民


第1章 風前の核先制不使用/政権狙う野党「原則見直す」

 「核ドクトリンを子細に検討し、現状に合うよう見直す」
 1カ月以上にわたるインド総選挙の投票が始まった2014年4月7日。最大野党インド人民党(BJP)の発表した公約の一節が、世界に波紋を広げた。
 核ドクトリンは1999年、BJPのバジパイ首相(当時)率いる政権が発表した。周辺国の核使用を抑えるための最小限の核兵器を持つが、先制使用はしないと決めた。
 インドは中国の核保有に対抗して98年に核実験を実施。世界から激しい批判を受けたばかりか、対抗してパキスタンも実験を強行し、核使用のリスクが一気に高まった。ドクトリンは各国からの強い批判をかわす狙いがあった。
 ただ、国際社会が求めてきた核不拡散条約(NPT)の加盟には、これまで応じていない。
 BJPは今回の選挙で優勢が伝えられ、14年5月16日の開票で10年ぶりに国民会議派を破り、政権に返り咲く可能性が高まっている。首相候補はナレンドラ・モディ氏。ヒンドゥー至上主義とナショナリズムを掲げる有力支持母体の元幹部だ。
 BJPのシタラマン報道官は4月8日、「核の先制不使用を見直すのか」との朝日新聞の質問に「核ドクトリンは発表から長い年月が経過しており、見直しは当然だ。(先制不使用も含めた)すべての内容を再検討する。だが、どう変えるかまでは決めていない」とし、詳細は語らなかった。
 国内では「選挙向けのアピールで、国際環境を考えれば実際に先制不使用を放棄するのは難しい」(B・Sマリク元陸軍中将)との声は少なくない。しかし、核ドクトリンの起草メンバーだった政策研究センター(ニューデリー)のバラト・カルナド上席研究員は「モディ政権が誕生すれば、当時よりもタカ派の政権になる。先制不使用は放棄されるだろう。私もそうすべきだと思う」と話す。
 ニューヨーク・タイムズは4月10日付の社説で、カシミール地方の領有権をめぐって対立するインドとパキスタンがそれぞれ約100発の核兵器を持っているとしたうえで「より挑発的なシグナルを送ることは、インドの国益のためにはならない」と警鐘をならした・・・

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