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経済・雇用
朝日新聞社

赤紙が来る! 自治体が進める国保・国民年金滞納者への「差し押さえ」作戦

初出:2014年3月3日、7日、4月21日
WEB新書発売:2014年5月2日
朝日新聞

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 「このままだとあなたの給料が! 家が! 車が! 差押になります。いますぐ(滞納金の)納付を!!」。その赤い封筒は、生活が苦しい人たちから「赤紙」と呼ばれ、恐れられる――。日本はすべての国民が公的医療保険を使って治療を受けられる「国民皆保険」が建前。しかし、その基礎を支える国民健康保険が、保険料未納の増加によって揺らいでいる。生活苦などで、滞納者が約2割にものぼっているのだ。老後や子どもの生活を支える国民年金も、4割以上の世帯が年金保険料を滞納している。滞納者は、病気や事故にあって初めて滞納による困難に直面することが多いが、さらに追い打ちをかけているのが、自治体による「差し押さえ」作戦だ。支えあい、助けあう、この国の基層が壊れつつある。その実相に迫った。

◇第1章 保険料、払いたくても
◇第2章 困窮者おののく「赤紙」


第1章 保険料、払いたくても

◎日雇い続き国保滞納
 帰宅を急ぐ会社員らで混雑し始めた夕方、東京のJR新宿駅前でショウタ(23)はせわしなくポケットティッシュを配っていた。
 「保険証? 持ってない」。鹿児島県の高校を卒業後、上京して機械メーカーの社員になったが、仕事になじめず、1年ほどで辞めた。公的な医療保険は会社の健康保険に入っていたが、今は国民健康保険だ。
 しかし、アルバイトをかけ持ちして稼ぐ月20万円ほどは家賃や生活費に消え、保険料は払っていない。「今は若いから。いずれ必要だから、25歳ごろには正社員に戻りたい」
 能登半島にある石川県七尾市に住む男性(59)は2013年夏、みぞおちに痛みを感じて病院へ駆け込んだ。「胃がん」と告げられた。
 窓口に出した国民健康保険証の有効期間は13日しかなかった。保険料を長く滞納してきたため、普通の1年間有効の保険証はもらえず、保険料の一部として千円ほど払って市から渡された「短期保険証」だ。
 手術などで数十万円。病院から医療費の自己負担を軽くする制度を教えられ手続きしたが、通らなかった。「生活保護に入れば無料になる」ともアドバイスされ、やむなく申請した。
 バブルのころ、9人の職人を抱える親方として建設作業を指揮していた。だが、バブル崩壊で仕事がなくなり日雇いなどで暮らすうち、50歳前から保険料を滞納するようになった。
 久々に保険証を手にしたのは3年前にあばら骨を折った時だ。市に相談すると短期保険証を渡され、その後は必要な時に千円ほど払って短期保険証をもらい、診察を受けてきた。「若い時は病気もけがもしなかったからなあ」。男性は「無保険」の苦労を背負う。
 日本はすべての国民が公的医療保険を使って治療を受けられる「国民皆保険」の国だ。だが、保険料を払えずに皆保険制度からこぼれ落ちる人が相次ぐ・・・

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