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朝日新聞社

日本に関税撤廃を求める TPP日米攻防、参加国識者が語る打開への道

初出:2014年4月16日〜19日
WEB新書発売:2014年5月2日
朝日新聞

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 環太平洋経済連携協定(TPP)をめぐる日米協議で両国は合意できるのか。米国はなぜTPPをまとめたいのか。日本が重視する農産品の関税を撤廃すれば、参加12カ国相互の利益になるのか。「各国が独自の事情を抱えていることを米国は理解し、柔軟な姿勢を示すべきだ」「日米が合意できれば、他の参加国も痛みを解決しようとする」……。元米通商代表部大使、慶応義塾大教授(元主席交渉官)、ニュージーランド前貿易相、マレーシア貿易産業省事務次官の見解に耳を傾け、難航する日米合意の打開策を探る。

◇第1章 交渉の成否、他国に影響
◇第2章 主戦場絞らず実利探れ
◇第3章 妥協では価値得られず
◇第4章 各国事情に柔軟さ示せ


第1章 交渉の成否、他国に影響

アイラ・シャピロ 元米通商代表部大使


 ――日米交渉が大詰めを迎えています。

 「ここ数週間で日米が交渉を加速しているのは、一定の合意に向けた両政府の真剣さの現れだ。TPPの成功は、日米が農産品の関税の問題を解決できるかにかかっている。参加国は日本が市場開放で何を打ち出すか注視している」
 「どんな交渉でも、期限を設けるなど『行動を起こさせる仕掛け』が必要だ。1993年に合意した(多角的貿易交渉の)ウルグアイ・ラウンドや90年代の日本との自動車協議など、私がかかわった交渉の大半では、政治家から明確な期限が示された時に加速した。今回の日米首脳会談は、その役割を果たしうる」

 ――米国はなぜTPPをまとめたいのですか。

 「オバマ大統領は、アジア太平洋地域が世界で最も活力に満ちた地域だと認識している。ホワイトハウスや議員の多くは、アジアが米国抜きで経済的に統合するのを望んでいない」

◎痛み伴う決断、避けられぬ
 ――牛・豚肉の関税引き下げを強く求めています。

 「農業の市場開放は米国にとって優先度が高い。牛肉、豚肉は多くの州で生産しており、米国の農産品の輸出で重要な位置を占めている。農業業界の強い支持なしに、貿易協定で議会の承認を得るのは不可能だ」
 「牛、豚肉で日本に関税維持を認めれば、悪い先例を作ってしまうという強い懸念が米国にはある。その意味で、日豪が合意した経済連携協定(EPA)の関税の水準は高すぎる。米国の牛肉業界は誰も満足しないだろう。だが、彼らは豪州が日本市場で有利になることも望んでいない」

 ――最終的に合意できるのでしょうか。

 「ここまで来て、『交渉は進展した』などの一般的な声明では、説得力を持たない。日米が合意できれば、他の参加国も痛みを伴う問題を解決しようとする。日豪EPAの大筋合意は最終的な文章ではないものの、主な項目は明確に示されていた。その段階まで到達する必要がある」
 「米議会で貿易交渉を大統領に一任する権限(TPA)の法案が議論されるのは、今年11月の中間選挙後になるだろう。権限を得るためにも、TPPで高い水準の内容を実現する必要がある」

 ――両国の立場にはまだ開きがあるようです。

 「過去の貿易協定を見れば、米国は韓国との協定でコメの関税撤廃を免除し、豪州との間では砂糖の市場開放を拒否した。日米の立場に差はあるが、乗り越えられないものではない・・・

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