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科学・環境
朝日新聞社

アトムもグーグル製!? IT界の巨人に奪われる日本のロボット技術

初出:2014年4月30日、5月1日
WEB新書発売:2014年5月16日
朝日新聞

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 シリコンバレーはいま、ロボット技術への熱気に包まれている。ロボットバブルに火をつけたのは、世界的なIT大手の米グーグルだ。ロボットベンチャー8社を買収したことが2013年12月に判明し、世界中のIT業界が大騒ぎになった。買収された8社の中で、もっとも大きな注目を浴びたのが、東大発ベンチャーの「シャフト」。会長のエリック・シュミットが近著「第五の権力」で「近いうちに米国の一般家庭でも数台の多目的ロボットを持てるようになるだろう」と予言するグーグルの狙いは、次の一手は何か?
 IT界の巨人に飲み込まれようとしている日本のロボット界、産業界の考えるべきことは? ロボット技術の最先端を見すえた緊急レポート。

◇第1章 のまれる日本のロボット技術/グーグル、次世代にらみ買収
◇第2章 東大辞め起業、福島が原点
◇第3章 ロボットビジネス、主役交代/挑む孫氏、ソニーは撤退
◇第4章 ヒト型ロボット商品化、展望欠く日本/単機能・安価、ニーズつかむ米


第1章 のまれる日本のロボット技術/グーグル、次世代にらみ買収

 米西海岸シリコンバレーはいま、ロボット技術への熱気に包まれている。
 2014年4月9日、カリフォルニア州パロアルト市で開かれた小さなロボット展示会。そこへ、投資家ら次世代技術の目利きたち1500人が殺到した。
 空気の出し入れで動くゴム人形のようなロボット、壁を上っていく尺取り虫のような物体、人工知能でコースを正確に走るミニカー……。40社が展示した製品はそれぞれ独自性にあふれていた。
 創業50年近いベンチャーキャピタルのデブダット・エールカーは「次の大きな波は何かと検討してきたが、ロボット分野だ」と断言した。
    ◇
 ロボットバブルに火をつけたのは、世界的なIT大手の米グーグルだ。ロボットベンチャー8社を一気に買収したことが13年12月に判明し、ニュースが世界を駆け巡った。
 グーグルは買収後、徹底した秘密主義を貫き、買収目的も明かさない。シリコンバレーで14年4月開かれたシンポジウムで、主催者が聴衆に語りかけた。
 「グーグルはロボット関連企業をどんどんのみ込んでいる。いったん吸収されると、そこから情報は一切漏れてこない。まるでブラックホールのようだ」
 8社のなかで、特に注目されたのが、東京大発ベンチャーの「シャフト」だ。
 13年12月、米フロリダ州のカーレース場で開かれたロボットコンテスト予選。シャフトは、米航空宇宙局(NASA)やマサチューセッツ工科大学(MIT)など強豪を押しのけて、参加16チームのなかで、断トツで予選を通過した。
 コンテストを主催したのは、米国防総省の国防高等研究計画局(DARPA〈ダーパ〉)。ダーパは、米国の国防費を背景にした豊富な予算を国内の大学や研究機関につぎこみ、最新のテクノロジーを吸い上げて軍事技術に応用している。
 12月のコンテストは、11年3月の東京電力福島第一原発事故がきっかけになっていた。ロボットが、がれきが積み重なる過酷な状況でも作業できるかがテーマだった。
 災害現場を模した会場で、ロボットたちはがれきの中を歩いたり、ホースを消火栓につないだりする八つの課題に挑戦。ほかのロボットが止まったまま動かなかったり、転倒したりするなか、シャフトの二足歩行ロボット「S―One(エス・ワン)」だけは着実に課題をこなしていった。
 圧巻だったのは、ロボットによる四輪駆動車の運転だ。エス・ワンは腕と足を使ってハンドルやアクセルを器用に操作。75メートルのコースを完走すると観客から歓声が上がった。予選トップのシャフトは、15年初めの本選でも優勝候補の本命だ。
 予選直前の13年11月にグーグルに買収されたシャフトは、その後ホームページを事実上閉鎖。マスコミの取材にも応じない。経済産業省が問い合わせてもなしのつぶてだ・・・

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