【お知らせ】WEB新書は閉店しました。

医療・健康
朝日新聞社

特養老人ホームが看取る 幸せな最期、献身的な介護職員のケアで迎えたい

初出:2014年4月12日〜4月29日
WEB新書発売:2014年5月16日
朝日新聞

このエントリーをはてなブックマークに追加

 「家族が自宅でみないことに負い目を感じないで下さい。ここが住まいなのですから」――横浜市の「グリーンヒル泉・横浜」と横須賀市の「太陽の家」は、自宅で介護や看取(みと)りができない家族に代わり、入所者の最期に付き添ってくれる特養ホームだ。「自然に逝く形」「QOD(死の質)」とは何か。なぜ職員は献身的に働き、入所者と家族の気持ちに寄り添えるのか。「(旅立つ)父と家族で、ゆったりした時間をもててよかった」「きっといい最期になる」など、利用者に感謝される特養ホームの様々な取り組みを追う。

◇序章 増える特養での看取り/点滴・胃ろう使わず死にたい
◇第1章 桜を見送り父は旅立つ/職員に囲まれて華やかな時間
◇第2章 楽しみ大切にケア
◇第3章 宣告に困惑、家族導く
◇第4章 穏やかな顔にする
◇第5章 点滴は潤いのために
◇第6章 自然に逝く形選ぶ
◇第7章 表情見て体調つかむ
◇第8章 「施設で最期」奔走
◇第9章 夫婦の絆取り戻した
◇第10章 「胃ろう抜く」決断
◇第11章 旅立ち、仲間が見守る
◇第12章 死と向き合う試練
◇第13章 生から死、つなぐ意識
◇第14章 介護と看護、探る連携
◇第15章 お別れ、それぞれの道/職員に充実感、運営に壁
◇終章 最期の迎え方、選択/入居時、希望を確認


序章 増える特養での看取り/点滴・胃ろう使わず死にたい

◎介護報酬の加算、後押し
 特養での看取りは、介護報酬に「看取り介護加算」が創設された2006年度前後から増え始めた。「回復の見込みがない」と診断された利用者に、看取りに向けた介護をした場合、死亡日から30日前までを上限に加算がつくようになった。
 死亡日の請求件数をみると、今の仕組みになった09年度の1万2500件と比べ、12年度には2万200件と約1・6倍に増えた。厚生労働省は、死亡日に近づくほど報酬を高くし、特養での看取りを増やそうとしている。
 また同省の人口動態統計によると、死亡者の場所別割合は、特養や有料老人ホームなどが12年は4・6%で、06年の2・3%に比べ2倍になった。一方、病院で亡くなる人は、06年の79・7%から12年は76・3%に下がった。自宅で亡くなる人はほぼ横ばいなことから、病院死が減った分は、特養などにシフトしているとみられる=グラフ。



 県内の施設でも、看取りは進んでいるようだ。県社会福祉協議会が県内の特養など108の社会福祉施設を対象に13年夏実施した調査によると、「看取り体制が整備されている」が59%、「整備していないがする予定である」が18%あった。また、看取り経験の有無を尋ねたところ、「経験あり」が72%で、体制が整備されていない中、看取りを行っている施設があることがわかった=グラフ。



 看取り増加のもう一つの理由は、点滴や胃ろうなどで延命せず、自然に枯れるように亡くなる「平穏死」「自然死」といった考え方が、一般の人々に広がってきたことだ。現状、特養の利用者の中には、最期は救急搬送され、病院で望まない延命治療をされ亡くなるケースも少なくない。
 さらに、介護職員自身に「看取りまでして、ケアを全うしたい」という声が強くなってきたことが挙げられる。特養「グリーンヒル泉・横浜」で看取り体制の整備に尽力したケアマネジャーの小山輝幸さん(39)は「長年心を込めてケアしてきたのに、最期は救急車で病院、では職員のモチベーションが下がってしまうと考えた」と話す。
 全国の特養などを会員にもつ全国老人福祉施設協議会は、看取りとは「近い将来、死が避けられないとされた人に対し、身体的苦痛や精神的苦痛を緩和・軽減するとともに、人生の最期まで尊厳ある生活を支援すること」と定義し、「ケアの完成としての看取り」を提唱している。

◎看護との連携が重要
 特養で看取りを進める上で、どんな課題があるのか。NPO「全国高齢者ケア協会」(東京)が、2010年度に全国の13特養を対象に実施した看取りの実態調査を元に考えたい。
 課題としてまず挙げられるのは、「医療体制の確保」だ。特養の配置医は非常勤が認められており、コスト面の理由で常勤医を置く特養は少ない。配置医は週1〜2回程度しか来ないケースがほとんどで、看護師も夜間は不在になる特養が多い。
 実態調査では「医師の都合で死亡診断に来てくれなかった」などの声があった。特養関係者によると、自然死に理解のない非常勤の配置医が職員に救急搬送を指示し、病院で亡くなるケースもあるという。
 「職員への支援」も、大きな課題だ。医師や看護師がいない中で利用者を看取るのは、介護職員にとって大きなストレスになる。施設で初めて人の死に立ち会う職員も多いという。
 実態調査では「夜間、介護職が看取らなければならなくなったときの不安を解消するために看護師の夜勤も必要」などの意見が出た。
 同協会の鎌田ケイ子理事長は「より良い看取りを進めるには、介護と看護の連携が重要になる。不安な介護職員に、看護師が『いつでもサポートするよ』という姿勢を示すことが大事だ。そうして看取りの体験を重ねていけば、死は特別なものではなく、日常生活の延長線上にあるもの、と受け止められるようになる」と話している・・・

このページのトップに戻る