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朝日新聞社

社長と中洲ママと渡辺美里 「大物」を夢見た少女が見せる活劇

初出:2014年4月23日〜26日
WEB新書発売:2014年5月16日
朝日新聞

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 女性の社会での活用が叫ばれるようになって、どれぐらいの歳月がたつのだろうか。この国の女性を取り巻く環境は大きく向上したが、それはあくまでも過去と比較した相対的な話。残念ながら、先進国の中では「女性を活用している国」なんて胸が張れるようなレベルではない。なぜなら、この国の男たちは、既得権益を本気で手放す気などないから。それでも、困難への一歩を踏み出す女性たちはいる。これは、本気でイスを奪いに行った女性の物語。

◇第1章 中洲のママ、昼は社長
◇第2章 夢捨てて、笑顔消えた10年
◇第3章 3分笑顔、ウルトラマン作戦
◇第4章 Revolution、求め続けて


第1章 中洲のママ、昼は社長

◎DV・離婚…「大物」夢見て明日へ
 コツ、コツ、コツ。階段を急ぐ黒いハイヒールの音が響く。この2014年4月16日夕、藤本ゆう子(44)は、東京・汐留を歩いていた。
 4日間にわたって東京、神奈川にいる客の資産運用の相談にのり、これから空路、福岡に戻る。
 藤本は、マネー運用セミナーの講師などを引き受ける保険代理店「yoU―Style(ユースタイル)」の社長だ。本社は福岡市。5人のスタッフをかかえる。2男1女の母でもある。


 39歳で起業するまで、クレディ・スイス生命(現アクサ生命)の営業の最前線で男たちと競った。
 その敏腕さと顧客への献身ぶりから、5年間の営業の前線時代、集めた保険料は一番多い年で1億円近くにのぼった。「百万ドルの女」の年収は、1600万円だった。
 起業してからは各地で講演する。希望者とは個人面談をし、人生設計にあわせて資産運用のアドバイス、つかんだ客は1千人をこえる。大手生保で、講師として社員教育もする。
 ユーモアあふれる語り口で、会場は笑いにあふれる。藤本は、いつも自己暗示をかけている。
 〈わたしには人を笑顔にする才能があるのよ〉
 1969年の夏、大分県の別府市に生まれた。父は温泉旅館の支配人だった。小学生のとき、放課後の朝礼台で、歌やものまねのオンステージ。将来の夢は「大物になる」だった。
 しかし、中学2年の4月、始業式の日、父が急死した。母がしていたアパレルの仕事で生計は成り立つものの、小遣いと進学資金を稼ぐため、年齢を偽ってバイトをした。
 そして就職、結婚、夫による家庭内暴力(DV)、離婚――。「大物」を夢見た少女の半生はまさに、波瀾(はらん)万丈だった。
 この4月16日、藤本が福岡空港につくと、もう夜10時近く。そのまま中洲に向かうと、雑居ビルの2階の「遊娘(ゆっこ)SUN」という看板のかかるスナックに入る。
 ボックス席にいるお客さんが「ゆう子ママ」と声をかけた。ここの経営者、ママさんなのだ。
 店をもつきっかけは、3年ほど前、ひとりの若い女性が訪ねてきたことだった。仕事が厳しく、なのに収入も少ないという。
 「ゆう子さん、わたしの人生を変えてください・・・

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