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社会・メディア
朝日新聞社

異見排除、その先のニッポン 差別を差別だと気付かない病根

初出:2014年4月28日〜5月3日
WEB新書発売:2014年5月16日
朝日新聞

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 「JAPANESE ONLY」。この国が、世界で孤立する方向へ導くかのような言葉が、堂々とまかり通るようになってきている。何が差別か想像もできず、立場や意見が異なるものは消し去りたい。その標的は、中韓を主とする外国人であり、原発に反対する者であり、為政者と対立する者であり、圧力に屈しようとしないメディアである。なぜ、排除しようとするのか。望むような排除がかなったら、その先には一体どんな風景が広がっているのか。

◇第1章 「お断り」ここにも/Japanese Only
◇第2章 原発、隠す・言わせず
◇第3章 特攻、伝わらぬ実像
◇第4章 ナチズム語る若者
◇第5章 言論、すくむ自治体
◇第6章 圧力恐れず、報じ続ける


第1章 「お断り」ここにも/Japanese Only

 キックオフの2時間前。酒に酔った30代の男たちが、1階通路に集まっていた。2014年3月8日午後2時すぎ、快晴の埼玉スタジアム。Jリーグ浦和レッズのサポーター集団「ウラワボーイズ・スネーク」の3人だ。本拠地開幕戦だった。
 縦70センチ、横2・5メートルの白い布と、スプレー缶を持ち込んでいた。コンクリートの床に敷き、黒い文字で、英語を吹き付けた。
 《JAPANESE ONLY》
 午後4時前。ゴール裏の観客席は、浦和のユニホームを着た熱心なサポーターで、真っ赤に染まっていた。席の出入り口に、3人はつくったばかりの横断幕を掲げた。隣には、日の丸が掲げられていた。
    ◇
  「同じ言葉だ」
 6日後、東京都内の男子高校生(18)は新聞の写真に目を奪われた。3人の横断幕で、浦和に無観客試合の処分が下されたと報じていた。
 3カ月ほど前、浅草で「Japanese Only」を目にしていた。
 クリスマスの日。アメリカ留学時に親友となった米国人男性(25)に、東京を案内していた。日本びいきで3度目の来日。皇居、浅草寺、仲見世通り……。お昼どき、友は「天丼が食べたい」と英語で言った。
 老舗(しにせ)の天ぷら屋へ。寒空の下、5分ほど並び、店に入ろうとした時、友がささやいた。「どういうことだ」。視線の先には引き戸に貼られたA4ほどの紙。「Japanese Only」と書かれていた。
 「やめたほうがいいかな」。悲しげな友の表情。ショックで、何と返事したのか、覚えていない。入らずに帰宅して、思った。
 「オリンピックを開く東京が、これでいいのか」
 記者が店を訪ねてみると、観光客の列の先に、その貼り紙はあった。
 「忙しい時だけ。差別のつもりはないよ」
 閉店後、片付け中の店主に声をかけた。白い調理服姿で店の外へ出てくれた。
 「貼り始めたのは、だいぶ前」「はっきり言って中国人だよ。団体客に困ってたんだ」「土足で畳に上ったり、勝手に2階に上がったり。衛生面で営業停止になったら困るのはうちだ。誰が責任をとってくれるんだい」。早口で話した。
 貼り紙に気づいた人から「不適切ではないか」と電話で注意も受けたという。
 「こっちの立場にもなってほしいよ」。そう言い、一枚の紙を記者に見せた。
 《Japanese Language Only》
 「日本人だけ」が「日本語だけ」になった。
 「これからは、これ貼るから。もういいだろ」
 店の奥へ引き返した。
    ◇
  元私立大教員の有道出人(あるどうでびと)さん(49)=米ハワイ州在住=は10年以上、日本での人種差別を研究してきた。米国出身。00年に日本国籍を得ている。
 「Japanese Only」「Foreigners are not allowed」。北海道のパチンコ店、群馬のパブ、愛知のクラブ、大阪の不動産屋、広島のバー、沖縄のカラオケ店……。いたる場で、「外国人お断り」を意味する看板や案内を確認した。その数、50以上。
 「あちこちにあるこの言葉が、どれだけの外国人を傷つけているか。想像したことはありますか・・・

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