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文化・芸能
朝日新聞社

中島貞夫監督の映画人生 エロもヤクザも戦争も、人間の本質を撮るんだ

初出:2014年4月28日〜5月9日
WEB新書発売:2014年5月23日
朝日新聞

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 監督デビュー作「くノ一忍法」は女忍者を狂わせる「忍法花開きの術」など、ヌードも見せるお色気映画だった。「脱獄 広島殺人囚」などヤクザ映画は任侠ではなく実録路線で撮った。戦争映画「あゝ同期の桜」では戦死した父への思いと反戦を込めた。菅原文太の飢えたぎらぎらした目はよかった。片岡千恵蔵は本物の役者。山田五十鈴は女としても女優としても一級品だった……。東映京都で活躍した東大美学出の異色監督が、「明るく楽しい東映映画」を捨てたテレビ台頭期から現在までの映画人生を縦横に語る。

◇第1章 エロもヤクザも、人間の本質描く
◇第2章 特攻隊を美化する構想に猛反発
◇第3章 ギリシャ悲劇研究から時代劇へ
◇第4章 「ヌードになって」汗だくで説明
◇第5章 テレビが描かないヤクザを「実録」
◇第6章 「御大」千恵蔵、本物の役者だった
◇第7章 新作は時代劇、撮影所育ちの「逆襲」


第1章 エロもヤクザも、人間の本質描く

 ――「温泉こんにゃく芸者」「にっぽん ’69セックス猟奇地帯」「893(ヤクザ)愚連隊」……。作品のタイトルと温厚なお姿とのギャップにびっくりです

 映画ってのはタイトルが一番大事なんだよ。みてみようって気にさせなきゃね。

 ――「新・極道の妻たち」などの任侠(にんきょう)・ヤクザものから、時代劇やドキュメント、お色気満載の「大奥(秘)物語」(「(秘)」は「丸」印内に「秘」の字)まで。撮ってきたジャンルは幅広いですね

 自分の作風を決めつけたくなかった。どうせ、まわりがあれこれレッテルをはるんだから。エロでもヤクザでも、人間の本質を描く点では変わらないよ。

 ――近年は教える仕事が増えています。「私の男」の熊切和嘉監督(39)、「もらとりあむタマ子」の山下敦弘監督(37)、「ぼくたちの家族」の石井裕也監督(30)など、数多くの才能を育ててきました

 大阪芸大の映像学科で1987年から20年ほど教えて、今は立命館大学映像学部の客員教授をしている。
 学生には「世の中のひんしゅくを買うのが映画だ」といってるよ。映画なんてのはやましくて、どっか後ろめたいもんなんだ。もの作るってそれほどかっこよくねえぞって。かっこよく描こうとすると失敗するよね。一番大切なのは自由。何でもいいからやりたいことをやれ。行儀良い悪いなんて関係ない。
 そしたら、熊切が持ってきたシナリオのタイトルが「鬼畜大宴会」。70年代の学生運動を舞台に、活動家たちの仲間内の暴力と性を徹底的に描いていた。「お前、これやったら絶対に留年するぞ。その覚悟があるならやれ」といったんだ。そしたらあいつ、本当にやっちゃったよ。

 ――指導するうえで心がけていることは

 脚本(ホン)の段階で「これどうやって撮るんか、撮れへんぞ」というくらい。あとはそそのかすだけ。みんな若いときは「これは誰も撮ったことがない作品」といいたがる。だけど日本映画の歴史がみんなやっとるわい。「自分が初めてだなんて、そんな恥ずかしいこと言うなよ」っていっているよ。
 撮影中は口は出さんね。被写体を作り、芝居をつけるのが監督の仕事。あとはキャメラマンにまかせておけばいいんだ。

 ――大阪芸大育ちの監督たちは、モニターではなく役者をきちんと見ているといわれてます

 今はデジタルの時代だから、監督はモニターばかりみがち。極端な話、モニターをみるために役者に背を向ける。そうじゃなくて、役者をみないと。芝居をきちんとみてると、「ちょっとセリフをとちっても、そのまま続けた方がいい」とかよくわかる。(菅原)文太なんかよく言ってたよ。「監督がみてないと力が入らない」ってね・・・

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