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朝日新聞社

実はハダカ好きな日本人 そのカラダの来し方と行く末

初出:2014年4月30日〜5月8日
WEB新書発売:2014年5月23日
朝日新聞

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 最近、自分のカラダのこと、じっくりと見たり考えたりしたことはありますか。久しぶりに水着を着てガッカリし、健康診断で問題があれば不安に襲われる。若いうちならともかく、年を取るほどにネガティブな感情を引き起こすことが多くなる我がカラダ。でも、どんなに嫌いなカラダでも、死ぬまでは捨て去ることはできない。もう一度、素直に自分のカラダを見つめ直してみませんか。新しい発見、あるはずです。良くも、悪くも。

◇第1章 アーサーくんに誘われて
◇第2章 眉を寄せる あなたは誰
◇第3章 裸が好きな私たち
◇第4章 100年で10センチ 日本の背比べ
◇第5章 ペリーの裸 再現させたい


第1章 アーサーくんに誘われて

 初めてアーサーくんを見たのは2013年の秋、テレビ画面の中でだった。理科室でおなじみの人体模型が顎(あご)をかくかくさせて話しかけてくる。
 「どうも。僕、アーサー。僕の体を作ってみない?」
 毎週ついてくる部品を組み立てると、身長110センチの人体模型が出来るという雑誌のCMだ。タイトルは「体のふしぎ」。骨だけの左手で頭をかくアーサーくんが、はにかんでいるようで愛らしい。「創刊号は頭蓋骨(ずがいこつ)、190円」。私は購読を決めた。
 50歳になったころから、身体のふしぎに目をみはる毎日である。
 老眼、五十肩、高脂血症。白髪ひとつとっても、突然黒くなることをやめて伸びてくるとは、何事か。
 「身は心のやつこ(奴)なり」と言ったのは江戸時代の儒学者貝原益軒だが、わが身は下僕どころか、日替わりで思いもよらぬ難題を持ち出す上司のようなものだ。厄介だが、無視もできない。
 家庭用血圧計を使おうとした時のことだった。説明書に心臓の高さで測れとあるが、さてどの辺か。内視鏡で腸のひだまで見たのに、自分の心臓のありかを知らずに半世紀生きてきたことに驚いた。
 アーサーくんを作り始めて2カ月、第8号に赤い心臓がついてきた。水色の左肺のくぼみに沿わせる。体の左と覚えていたが、思ったより中央に納まった。ここが心臓か。雑誌の表紙の裏を見ると、「対象は4歳以上です」。
 「小学生のお子さんがいる家庭が主なターゲットです」
 アーサーくんの発行元アシェット・コレクションズ・ジャパンの佐藤建編集長(45)が説明する。会社は分冊百科と呼ばれる雑誌の専門出版社で、佐藤さんは現在「体のふしぎ」のほか、「日本の貨物列車」「世界の貨幣コレクション」など準備中のものも含め40誌以上を手がけている。
 「これはグローバルなビジネスで、国柄に関係なく成功するものは成功します」
 アーサーくんももともとスペインの会社の企画で、ヨーロッパを中心に売られているという。現在出ている「体のふしぎ」は改訂版で、06年から「アーサーが教える体のふしぎ」全80号が刊行された。購読層の世代が入れ替わったタイミングで改訂、ということらしい。
 今回商品サポートのためにフェイスブックのページを設けたら、マイアーサーに帽子をのせたり、ポーズをとらせたりした写真が送られてきた。「自分で楽しんでいる大人も多いことがわかりました」
 思えば遠い昔、からだに興味津々だった頃があった。
 経験したことのない異変に「足がパチパチしてフニャフニャだ」と騒ぎ、「しびれる」という言葉を教わった。乳歯が抜けては驚き、鼻血を出してはうろたえ、おそれと高揚感の中で自分のからだに向き合っていた。
 現代哲学は「心身問題」を深遠に議論してきたが、人は老いて再び、理屈抜きに身体の実感を取り戻すものなのかもしれない。
 「身体」に出合えそうな場所を、気の向くまま巡ってみようと思う・・・

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