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政治・国際
朝日新聞社

サイバー軍拡戦争 バーチャル&リアルで加速するテクノロジーの戦場

初出:2014年2月28日、5月5日
WEB新書発売:2014年5月23日
朝日新聞

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 「われわれの作戦はグローバルだ。ドイツや日本などの同盟国も、指導者の携帯電話やパソコンの監視をいとわない」。米政府でサイバー情報戦を担った元高官はこう言う。 サイバー世界という見えない場所での戦争が幕を開けた。その世界を支配するのは米国であり、日本はようやく独自の取り組みを始めたにすぎない。米国が構築したグローバルなインテリジェンスネットワークは、テロ対策を名目に利用が拡大してきた無人機をも組み合わせた米国のグローバル監視・攻撃体制はどこまで進化を続けるのか? 日本はそれにどう受け止めるべきなのか? 深層をえぐるリポート。

◇第1章 サイバー防衛、危うい民間頼み
◇第2章 無人機攻撃、深い闇


第1章 サイバー防衛、危うい民間頼み

 「日本のウェブサイト(の守り)が、厳しくなってきている。攻撃は難しいのか?」「問題は必ずある。結局、(サイバー空間で)使う言語は数種類だ」
 2013年9月13日から18日にかけ、中国内のサイトでやりとりされた、中国ハッカーたちの会話だった。サイトには、攻撃用のソフトも添付されていた。
 1931年9月18日、満州事変の発端である柳条湖事件が起きた。中国ハッカーたちは近年、「国恥の日」とされるこの日をめがけ、日本の政府機関や企業に大規模攻撃を仕掛ける。12年の「尖閣国有化」直後は、日本の裁判所や病院など複数のサイトが中国国旗の画像に改ざんされた。
 この攻撃を防いでいる主役は、日本政府ではない。日本政府の情報セキュリティーも担う民間組織が攻撃の情報を収集、対応にあたっている。複数の政府関係者は「我々だけでは手に負えない」と語る。一方、内閣官房によれば、12年度には政府機関だけで、108万件の不正アクセスやサイバー攻撃などに遭った。1分間に2回ずつ何らかの攻撃を受けたことになる。
 攻撃が活発化するのは、重要な情報がサイバー空間を駆けめぐるようになったからだ。米国は、世界に先駆けてサイバー空間のインテリジェンス(情報収集・分析活動)を本格化させた。サイバー兵器も保有しているとみられる。イラン核施設で障害を引き起こした「スタクスネット」は、米国・イスラエルによる共同開発と、米メディアが報じた。
 民間の協力が不可欠になり、リスクも高まった。12年現在、米政府内で「最高機密」を扱う職員は約79万人いるが、契約業者の約48万人も同じ情報に触れることができるからだ。米国家安全保障局(NSA)のエドワード・スノーデン元契約職員による米国史上最大級の機密流出は、そのなかで起きた。

◎サイバー戦支配の米、更なる「軍拡」
 サイバーという「見えない世界」の新たな情報戦争が幕を開けた。その世界を支配するのは米国であり、例外を許さない情報収集活動を繰り広げてきた。日本はようやく独自の取り組みを始めたに過ぎない。
 ロシアに亡命中のスノーデン元職員は2月、英スコットランドの名門グラスゴー大学の学生投票で「学生総代」に選ばれた。同氏は「共通の価値観を守るために歴史的な意見を示してくれた学生に感謝する」とコメントした。
 米国家安全保障局(NSA)の契約職員としてシステム管理者の立場に就き、機密情報を暴露した。情報収集活動のためなら同盟国も友好国もない現実が、白日の下にさらされた。
 だが、オバマ大統領は1月のNSA改革の演説で活動に一定の制限を加えるとしつつ、「デジタル通信に入り込み情報収集する能力がなければ、テロやサイバー攻撃の脅威は防げない」と訴えた。同盟国も盗聴対象になる抜け道も残した。
 米政府でサイバー情報戦を担った元高官が証言する。「我々の作戦はグローバルだ。ドイツや日本などの同盟国でも、指導者の携帯電話やパソコンの監視をいとわない」
 スノーデン元職員は、NSAが日本を含む38の大使館や代表部の通信を傍受していた疑惑も暴露した。
 元NSA職員らによれば、ワシントン郊外のNSA本部には外国のネットワークに侵入し、情報を盗む極秘チームがある。軍出身者や文民ハッカーら1千人以上が24時間態勢で任務に就いているとされる・・・

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