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朝日新聞社

裁判員制度、見えてきた課題 「何が正しいのか、わからなくなった」

初出:2014年5月18日〜5月20日
WEB新書発売:2014年5月30日
朝日新聞

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 市民が刑事裁判の審理に参加する「裁判員制度」の施行から2014年5月で5年を経た。この間、制度はどう運用されたのか。検察側の「証拠の開示」や取り調べの「可視化」は進んだが、死刑をめぐる審理では、市民裁判員の「議論を尽くした」判決が「先例」を優先した裁判官に破棄された。審理の長期化や証拠の見せ方は裁判員にどんな負担を強いているのか。心のケアが必要で、辞退率も上昇している……。各地裁判所の実例を示し、制度の現状と見えてきた課題を考える。

◇序章 裁判員制度5年の現実
◇第1章 死刑、覆された市民判断
◇第2章 証拠の見せ方、手探り
◇第3章 映像の影響どこまで


序章 裁判員制度5年の現実

◎5万人参加、死刑判決21人
 殺人事件など重大な刑事裁判の審理に市民が参加する裁判員制度が、2014年5月21日で施行から5年になる。3月末までに5万人近い市民が参加し、6391人の被告に判決を言い渡した。一方、裁判員候補者に選ばれながら辞退する人は年々増え続けている。仕事を休んで公判に臨まなければならない人たちの「裁判員離れ」を懸念する声が強まっている。
 最高裁によると、6357人に有罪判決が言い渡され、このうち21人が死刑判決を受けた。うち4人の死刑が確定し、2人は確定からまもなく3年になる。執行されたケースは、まだない。134人が無期懲役となった一方、34人に無罪が言い渡された。
 裁判員と補充裁判員を務めた市民は、計4万9434人。一方で、候補者になったものの辞退した人の割合(辞退率)は、制度3年目の11年以降、3年連続で上昇している。13年は63・3%だった。14年はさらに上昇する傾向をみせている。
 辞退率上昇の背景には、審理の期間が長くなっていることが挙げられる。初公判から判決までの「平均審理期間」は、制度が始まった09年が3・7日だったが、13年には2倍以上の8・1日になっている。


第1章 死刑、覆された市民判断

◎先例優先か、二審で3件
 初めてつかまり立ちをして見せた笑顔、ひな人形の前でほほ笑むあどけない姿、友だちと行った沖縄でのシュノーケリング、母校での教育実習――。
 荻野友花里さんが生きた21年の証しが、一枚ずつスライドに映し出された。2014年3月末、兵庫県のJR明石駅前にある学習センターの一室。友花里さんの級友や両親を支援する約100人が集まった。
 スライドが終わると、母・美奈子さん(61)が言葉を絞り出した。
 「裁判員の方々が友花里の無念の死を、私たちの心情を、分かって下さった。最高裁で、友花里の命の価値を正しく判断していただきたい・・・

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