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政治・国際
朝日新聞社

分裂するヨーロッパ 欧州議会選で噴き出した「懐疑派」「右翼」の不満

初出:2014年5月13日、14日
WEB新書発売:2014年5月30日
朝日新聞

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 5年に1度実施される、欧州連合(EU)議会選。欧州金融危機後、初めてとなる今回の選挙では、右翼やEU懐疑派の議席が大きく躍進し、3割の議席を確保しそうだ。長年にわたって連綿と続けられた、欧州統合へ向けての歩みは、ここへ来て足踏み・頓挫するのか? それとも危機を残り越えて、さらなる統合へ進むのか? 「一つの欧州」の夢を賭けた欧州の危機の実相をレポートする。

◇第1章 EU懐疑派・右翼に勢い
◇第2章 ユーロ危機 尾引く反目


第1章 EU懐疑派・右翼に勢い

◎議席3割うかがう
 パリ・オペラ座前の広場に2014年5月1日、数千人が集まった。フランスの右翼「国民戦線(FN)」が欧州議会選を前に開いた集会だ。
 オペラ座には、12の星が青地に円を描く欧州の旗がたなびいている。その玄関を覆わんばかりの巨大なポスターは、ジャンヌ・ダルクが、欧州統合の象徴である星を一息に吹き飛ばす絵柄が描かれていた。「ブリュッセルにノン」。欧州連合(EU)の本拠ブリュッセルへの反旗だ。


 「EUへの不名誉な降伏に、背を向ける機会だ」
 マリーヌ・ルペン党首は、ユーロ導入で暮らしが厳しくなったと説明したあと、こう声を張り上げた。拍手がわき、支持者はフランス国旗を振って応えた。
 フランスではいま、従来は傍流だった右翼政党FNが、主役の座に躍り出つつある。
 仏CSA社の調査では、欧州議会選で投票したい政党に、FNが24%でトップに立った。政権与党・社会党(PS)の20%も、最大野党・民衆運動連合(UMP)の22%をも上回った。
 「選挙で選ばれたわけでもないブリュッセルの官僚が欧州の将来を決め、ユーロの導入で暮らしは厳しくなった」「巨大な競争力を持つ農家との競争が待ち受ける米国との貿易協定はおかしい」「大量の移民は、雇用を奪い、社会的なコストもかかる」――。FNのこんな主張は、失業率が10%超で高止まりするなかで、いらだちを強める仏国民に響いている。
 前回09年の欧州議会選でFNの得票は6%余りで、フランスに割り当てられた72議席(当時)のうち3議席にとどまった。FNは今回、15〜20議席を奪っての大躍進を見込む。
 FNは1972年、ジャンマリ・ルペン氏のもとで結党された。ジャンマリ氏はかつて、ユダヤ人虐殺を「ささいなこと」とも発言し、キワモノ扱いされてきた党だった。だが11年に後継となった娘のマリーヌ氏は、自らの名前とも重なり、海の色を表す「ブルーマリン」をFNの代名詞として使い、批判をあびるような極端な発言もしない。「極右」ではない、「普通の政党」としてのイメージ戦略も奏功している。
 欧州では、欧州議会でも、各国議会でも、中道右派や中道左派といった比較的穏健な政党が多数派を形成してきた。FNは、「(中道の右派・左派による)2極時代は終わった。われわれが、新たな選択肢だ・・・

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