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朝日新聞社

さみしさから抜けだしたくて…… 高齢女性受刑者の肖像

初出:2013年11月22日、2014年5月23日、24日
WEB新書発売:2014年6月6日
朝日新聞

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 罪を犯し、刑務所へ入る高齢の女性が増えている。2013年の犯罪白書によれば、全国の女子刑務所に入所した65歳以上の高齢受刑者は、この20年で10倍にも増えた。万引きなどの窃盗を繰り返し、何度も収容される人も多くなる一方、介護の必要な高齢者が増え、「まるで福祉施設」と言われることもある。累犯者は、口々に「さみしさ」や「不安」を動機に挙げる。「受け皿」のない社会の息苦しさを問うルポ。

◇第1章 老いる女性受刑者/トイレ・服薬…刑務官が「介護」
◇第2章 孤独・不安、犯罪繰り返す/夫が暴力…逃げた店で万引き
◇第3章 立ち直り、支える居場所/更生保護施設で規則正しい生活


第1章 老いる女性受刑者/トイレ・服薬…刑務官が「介護」 

◎犯罪白書、高齢者20年で10倍
 午後4時半。工場で刑務作業を終えた女性受刑者たちが整列して居室に戻っていく。列の後ろに、杖をついたり足を引きずったりしながらついていく人たち。車いすの受刑者は別に分けられ、ゆっくりと進む。
 2013年10月、女性だけが入所する和歌山刑務所(和歌山市)で許可を得て取材した。定員500人を超える564人(13年10月25日時点)が入り、60歳以上が約4分の1の140人。多くが糖尿病、白内障などの疾病を抱えているという。
 認知する機能が低下した人もいる。トイレに付き添い、下着を下ろせるかを確認するのは刑務官だ。「税金を使い、受刑者を介護する状況になっている」。ある刑務官が漏らした。
 表情がうつろになっていないか、熱中症は大丈夫か……。健康に見える受刑者に対しても、高齢を念頭に置いた普段からの気配りが欠かせないという。
 収容人員が736人(13年10月1日時点)と女子刑務所では最大の栃木刑務所(栃木県栃木市)。この工場にも高齢受刑者が多数いた。
 高齢でない受刑者がミシンを使った裁縫などに取り組む中、高齢受刑者には箱を折ったり、ひもにビーズをつけたりする簡単な作業が割り当てられていた。認知症が疑われる人や耳が聞こえにくい人は、刑務官のそばの席に座っていた。
 栃木刑務所では、職業訓練でホームヘルパーの資格を取った受刑者が介護を担うことがある。刑務官も汚物の片付けや着替え、服薬などを手伝うことが増えたという。女性刑務官は「こうした仕事が増えると、刑の執行業務に影響が出かねない」とつぶやく。



◎将来不安・孤立感が原因?/社会復帰環境づくりを
 法務省によると、12年、刑務所に入った65歳以上の女性285人のうち約8割は万引きを中心とした窃盗罪で刑を受け、半数は再犯者という。
 広島県内でも、万引き容疑で検挙される高齢者が増えており、女性も目立つ。
 13年11月13日、呉市の女性(86)がスーパーで296円の精肉1パックを万引きした疑いで現行犯逮捕された。県警によると、約6万4千円を持っていたが、「お金を使うのがもったいなかった」と供述したという。
 11月7日には広島市の女性(74)が魚粉3袋など27点(計4831円)を、13年10月も福山市の女性(65)がインスタントコーヒーの瓶3本(計2694円)を万引きした疑いで逮捕された・・・

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