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政治・国際
朝日新聞社

麻薬戦争新展開 徹底対決から合法化まで世界の新潮流を見る

初出:2012年6月20日、2014年2月6日、4月16日、5月9日
WEB新書発売:2014年6月6日
朝日新聞

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 世界各地で治安悪化、地域紛争の火種となり、たくさんの人々の人生を転落させている麻薬。人類はその魔力とどう戦い、どう抑えつけようとしているのか。世界最大の麻薬産地・アフガニスタン、大麻の合法化に踏み切った米コロラド州、同じく売買・栽培合法化で治安改善を目指す南米ウルグアイ、徹底した麻薬組織の取り締まりでスラムの風景が一変、世界中から観光客を集めるまでになったブラジルなど、世界各地の取り組みを紹介する。

◇第1章 アフガン麻薬、密輸絶て/「中継地」タジキスタン、取り締まり強化
◇第2章 楽しむ大麻、合法化の波紋/米国初解禁のコロラド、市民に賛否
◇第3章 大麻OKで治安改善?/ウルグアイ、売買・栽培合法化
◇第4章 ブラジル・リオのスラムに民宿次々/麻薬組織取り締まり、治安改善


第1章 アフガン麻薬、密輸絶て/「中継地」タジキスタン、取り締まり強化

 世界有数の麻薬産地アフガニスタンのアヘンや大麻が、密輸の中継地となる隣国を悩ませ続けている。主な消費地は欧州やロシアだ。原料になるケシの栽培面積は過去最大となり、米軍などが2014年末までに撤退すれば、麻薬を資金源とする過激派が活発化する恐れもある。対策に力を入れる中央アジアの旧ソ連の国タジキスタンを訪ねた。

◎過激派の資金源、押収急増
 扉を開けると生臭いにおいが鼻をつく。「それは大麻だよ」。タジキスタン麻薬取締局の職員が言った。
 首都ドゥシャンベの麻薬取締局には、国内各地で押収された麻薬が保管されている。室内には押収場所と日付が書かれた袋や箱が天井まで積み上げられ、中身はほとんどがアフガニスタン産麻薬だ。最近は大麻の押収量も増えているが、大規模に栽培されるケシを原料とするアヘンやヘロインも山積みされている。
 取り締まりの「司令塔」を担う部署では、女性を含む職員数人が厳しい表情でパソコンを見つめる。画面にはアフガニスタンとタジキスタンにまたがる麻薬組織のチャート図が表示されていた。「ここでの分析をもとに内偵捜査が進められる」と職員は説明する。
 押収した麻薬の成分を分析する研究室も訪れた。「麻薬はこうして密輸されるのです」。研究員が見せてくれたのは、アーモンドやドライフルーツ。中に麻薬が隠されていた。ヘロインの保証書代わりになるという布には、生産地や純度などが印字されている。


 麻薬取締局によると、麻薬を欧州に運ぶルートには(1)タジキスタン、ウズベキスタン、トルクメニスタンからロシアを通る「北ルート」(2)イランやトルコを通る「バルカンルート」(3)カスピ海から黒海沿岸、ロシアを通る「北黒海ルート」(4)パキスタン経由の「南西ルート」――がある。


 タジキスタンで13年押収された麻薬は、日本の約6倍に当たる約6・5トン。5年前より4割増えた。麻薬取締局のナザロフ局長は「押収量が増えたのは取り締まり態勢が強化された結果だが、麻薬取引そのものが増加していることの表れでもある」と表情は硬い・・・

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