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朝日新聞社

なくならない踏切事故のなぜ 置き去りにされる高齢者たち

初出:2013年12月25日、2014年4月25日、4月29日
WEB新書発売:2014年7月4日
朝日新聞

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 踏切の中で人が列車にはねられる事故が後を絶たない。犠牲者の多くは高齢者たちだ。悲惨な事故に遭ったにもかかわらず、本人の不注意が原因と見られたり、中には犯罪者扱いされたりすることすらある。高齢者自身の身体の問題、なかなか減らない「開かずの踏切」、生活に欠かせない「里道」の存在……事故の理由は様々ある。それらを一つ一つ改善していくことはもちろんだが、実は欠かせないのは「周囲のサポート」、とある遺族は訴える。

◇第1章 踏切事故、後絶たぬ犠牲者/遺族の取り組み
◇第2章 線路またぐ生活通路/無数の「里道」、相次ぐ高齢者事故
◇第3章 踏切、高齢者置き去り/渡りきれぬ場所、解消進まず
◇第4章 秒速1メートルで黄信号


第1章 踏切事故、後絶たぬ犠牲者/遺族の取り組み

 踏切事故は避けられないのだろうか。2013年、いくつかの事故現場に行き、超高齢化に追いつかない現状にもどかしい思いを持った。
 横浜市鶴見区のJR生見尾(うみお)踏切で13年8月、88歳の男性が列車にはねられて死亡した。翌日、遮断機の傍らで、花束を手向ける女性がいた。踏切事故遺族の会「紡ぎの会」代表加山圭子さん(58)。加山さんは05年3月、東京都足立区の東武伊勢崎線・竹ノ塚駅近くの踏切での事故で母を亡くし、以来、首都圏で踏切事故が起きると、現場を訪ねて花を手向ける。
 多くの現場を見てきた。現在、鶴見区の隣の神奈川区に住む加山さんは、生見尾踏切を知っていた。長さ約40メートル。でこぼこがある。高齢者には厳しいそうだ。「長くて危ない踏切だとは思っていました。でも、こんな事故が起きるとは」
 加山さんの母は当時75歳。1人で元気に外出していた。あの日もクリーニング店に行った帰りだった。
 1人残った父が13年、鶴見区に越してきた。「お母さんの事故を思い出すから」と、今も踏切を避ける。生見尾踏切は渡らず、歩道橋を使う。
 加山さんは母の死後、航空機事故や医療事故にまつわるシンポジウムに参加し始めた。ブログで踏切事故のことに触れると、全国の踏切事故の遺族から連絡が来るようになった。
 高知県で、電動車いすで踏切から出られずはねられた女性が、過失往来危険の疑いで被疑者死亡で書類送検された。遺族から「罪を犯したと扱われ、やりきれない」と連絡が来た。
 「踏切事故は、被害者本人の不注意が原因と見られがち。互いを支え合える場をつくりたい」と3年前、遺族の会を設立。年に2回、遺族たちの手記を載せて会報を出している。
 13年12月中旬、加山さんと生見尾踏切を訪ねた。踏切が開いているのは、最も短くて1時間あたり19分余。「開かずの踏切」だ。警報音が鳴り、歩行者が小走りで渡る光景に出くわす。
 13年、県内では踏切事故が相次いだ。10月には緑区の横浜線で男性を助けようとした女性(当時40)がはねられ死亡。11月には神奈川区で男性(当時71)が、自転車で京急線の踏切に取り残されて死亡した・・・

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