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文化・芸能
朝日新聞社

アニメ今昔物語 テレビ60年の歴史を支えた日本独自の文化

初出:2014年6月16日〜6月20日
WEB新書発売:2014年7月4日
朝日新聞

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 「機動戦士ガンダム」のララァ・スン役などで有名な声優、潘恵子は日本の「テレビ元年」、1953年の生まれ。鉄腕アトムを見て育ち、劇団員を経て「サザエさん」でデビューした。娘の潘めぐみも声優で、日本テレビ系の「HUNTER X HUNTER」では主役、テレビ朝日系「ハピネスチャージプリキュア!」でも主要キャラの一人を演じている。「魔法使いサリー」「マジンガーZ」など錚々たる名作を生み出した東映アニメーションを支えるフリーアニメーターの青山充、「鉄腕アトム」から放映中の「名探偵コナン」まで半世紀にわたってアニメ脚本を書いてきた脚本家の辻真先、「宇宙戦艦ヤマト」の松本零士、ベテランアニソン歌手のたいらいさおなど、アニメの伝統を作ってきた当事者のインタビューから、その独自性を浮かび上がらせる。

◇第1章 アニメと歩む、母娘の成長物語
◇第2章 ヒット30年「8時半の男」
◇第3章 1話7分、1カ月分の苦心
◇第4章 おいどんは4畳半で宇宙を思う
◇第5章 アニソン、いつの日か「童謡」


第1章 アニメと歩む、母娘の成長物語

 テレビ放送が始まった1953年生まれの人生にテレビ史を重ねる旅。今回は、アニメをとりあげる。
 まず、母と娘、2代にわたる人気声優の物語から。
 潘恵子(はんけいこ)。この名を聞いて、アニメファンはいろんな声を思い出されることだろう。
 最も多いのは、「機動戦士ガンダム」で異彩を放ったララァ・スンの役か。「聖闘士星矢」の城戸沙織、あるいは「新竹取物語 1000年女王」の雪野弥生という方もおられるかもしれない。
 潘は私と同じテレビ元年、東京の生まれだ。63年に日本初の本格的なアニメシリーズ「鉄腕アトム」が始まったころのことをこう振り返る。
 「それまでアニメといえばディズニー。鉄腕アトムは新鮮で、ホントよく見てたわ」
 鹿児島の山奥で育った私との違いは、近くに劇場があったことだ。演劇にひかれ、日本大学芸術学部へ。在学中に劇団未来劇場に入ったことがアニメへの道を開く。
 「ちょっと疲れて弱気になり、劇団のスターだった内海賢二さんに相談したの。そしたら、声で出演されてた海外アニメの吹き替えのスタジオに連れていってくださって」
 内海の妻、野村道子はフジテレビ系のアニメ「サザエさん」でワカメ役をやっていた。「声の仕事してみない?」
 サザエ家の隣に住む浜ミツコ役でアニメデビュー。77年のことだ。伊佐坂ウキエの役に転じ、出産で休むまで「サザエさん」との縁は続いた。
 89年に生まれた長女、めぐみは歌や踊りが好きだった。「母と同じ道に進む気はなかった」が、「おなかの中でつながっていたのかな」。
 日大芸術学部に在学中の2011年、日本テレビ系のアニメ「HUNTER X HUNTER」で、主人公のゴン=フリークス役でデビュー。
 オーディションを受けたのは、子供のころから一番好きな作品だったからだ。
 「最初は、かっこいい男の子のキャラクターにひかれたんです。でも、一緒に年齢を重ねたからこそ、誰もが主役になれる世界観の魅力がわかるようになりました」
 14年2月から、テレビ朝日系の「ハピネスチャージプリキュア!」で白雪ひめ(キュアプリンセス)を演じている。少年ゴンと対照的な少女役。役作りに苦労はないのか。
 「おしゃれが好きな子だから、それに近い子の観察で街に出たりしますね。ゴンは、昔から男の子と遊んでて、身近にお手本があった感じ」
 母と娘は別の部屋で別のテレビを見る。時に母から注文がつく。こんなふうに。
 「タイプが違う人間が出てるんだから、つられないようにね。みんなでずっとハイテンションじゃだめよ」
 娘は言う。「仲間といる時と、一人になって考える時。緩急をつけるってことだと思います。一見おばかさんだけど、一話一話成長していく。見ているお子さんのお手本になんなきゃいけませんしね」
 「そうそう、モノローグができたら一人前よ」。母はうれしそうだ。
 一話ごとの成長物語。それがアニメの魅力に違いない・・・

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