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科学・環境
朝日新聞社

富士山は世界文化遺産にふさわしいか 弾丸登山からトイレ問題、派手看板まで

初出:2014年6月17日〜6月22日
WEB新書発売:2014年7月4日
朝日新聞

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 富士山が世界文化遺産に登録されて、2014年6月で1年を迎えた。ユネスコ(国連教育科学文化機関)の世界遺産委員会からは、文化的な価値を伝えるための情報戦略や、適正な登山者数の維持などを勧告されており、諮問機関のイコモス(国際記念物遺跡会議)は、開発が進んだ富士山周囲の景観に厳しい視線を注いでいる。周囲の自治体では、派手な色の看板を塗り替えたり、商業施設のデザインを変更したり、富士五湖のモーターボートや水上バイクの規制に乗り出すなど、対策に追われている。毎年のように死者を出している「弾丸登山」や、登山マナーの向上など、課題は山盛りだ。果たして富士山は、世界文化遺産にふさわしい存在になれるのだろうか。関係者の努力を追った。

◇第1章 景観守る意識育つか
◇第2章 観光の圧力「平穏」危機
◇第3章 軽装・弾丸…無謀登山
◇第4章 信仰の歴史に再び光
◇第5章 外国人おもてなしは


第1章 景観守る意識育つか

◎看板に基準、改修に費用の壁
 雄大な富士山を背にする静岡県御殿場市の矢崎エナジーシステム富士工場。道路沿いの3カ所にあった縦1・2メートル横2・4メートルの案内看板が、2014年5月に一新された。3分の1を占めていた原色の赤を、周囲と調和する色調の緑に変えた。
 きっかけは4月に施行された市の総合景観条例だ。
 富士山の眺望や景観を守るため、野外広告看板の高さ、大きさ、色を制限。建物のデザインや色彩にも基準を設けた。同工場の案内看板は新基準に適合した改修の第1号になった。
 しかし、市の許可を受けた野外看板約700枚のうち、半数は基準に不適格。市が13年行ったアンケートや聞き取り調査では、「コーポレートカラーなので変更できない」「改修には数百万円かかり、難しい」など、改修について否定的な意見が多かった。
 御殿場市の志水政満・都市計画課長は「企業も含めた市全体で富士山の景観を守るという意識を育てていくしかない」と話す。


 富士山の世界文化遺産登録に際し、ユネスコの諮問機関・国際記念物遺跡会議(イコモス)は、開発が進んだ富士山周辺の景観に厳しい視線を投げかけた。ふもとの建築物についても「さらに厳しい規制が必要」と勧告している。
 富士山北麓(ほくろく)にあたる鳴沢村の森林。コンクリート塀で囲われた93ヘクタールの広大な空き地が広がる。
 「この土地の活用は、地権者にとって長年の悲願なんです」。土地を所有する一人、村議の三浦利雄さんがつぶやいた・・・

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