【お知らせ】WEB新書は閉店しました。

科学・環境
朝日新聞社

原発はほんとに迷惑施設 立地首長ら9人が「頭冷やせ、原発いらね」

初出:2014年6月14日〜6月26日
WEB新書発売:2014年7月11日
朝日新聞

このエントリーをはてなブックマークに追加

 「原発マネーは一炊の夢。(立地自治体は)あぶく銭をもらって将来があるのかね。疫病神だよ」「原発はコストが安いなんて国家ぐるみの壮大な粉飾決算」「事故が起きないシステムを確立するのは不可能」「これからの原発訴訟は我々が勝つ」。安倍政権が2014年秋から九州電力川内原発や玄海原発の再稼働をめざすなか、廃炉を求めた茨城県東海村前村長、脱原発を訴える城南信用金庫理事長や福島県南相馬市長、柏崎刈羽原発などを手がけた大手原発メーカーの元設計技術者ら9人が、なぜ日本の原発政策を再考する必要があるのか、自らの実体験や信条を交えながら語る。

◇第1章 原発を持つ資格はない/村上達也・茨城県東海村前村
◇第2章 産業構造としては脆弱/会田洋・新潟県柏崎市長
◇第3章 脱原発、首長集め会発足/三上元・静岡県湖西市長
◇第4章 原発に頼らない経済を/古賀和裕・唐津上場商工会長
◇第5章 脱原発は公益にかなう/吉原毅・城南信用金庫理事長
◇第6章 見返り、地域に役立たず/徳田勝章・元川内原発次長
◇第7章 「事故起きない」不可能/後藤政志・元原子力プラント設計技術者
◇第8章 原発建設再開「頭冷やせ」/工藤寿樹・北海道函館市長
◇第9章 再選の民意「原発いらね」/桜井勝延・福島県南相馬市長


第1章 原発を持つ資格はない

村上達也・茨城県東海村前村長


 ――2013年9月まで4期16年村長を務めた茨城県東海村には日本原子力発電(原電)の東海第二原発が立地しているが、立地自治体の首長が「脱原発」なんて聞いたことがなかった

 原子力は異様な世界だと最初に思ったのは、1997年9月に村長になってから。この年の3月に動燃の火災・爆発事故が起きて、再処理工場を再稼働するかどうかという時代だった。
 職員が役場にやってくるわけだよ。原電も動燃も。原子力についてレクチャーしようと言いながら、何人か一緒に来て必死に発言をメモに取る。毎日ぐらい来るんだな。村長、村職員を取り込もうと。
 99年にはJCOの臨界事故を体験し、「原子力推進の旗は振らない」と、かなり批判的になったから、よりマークされたかな。取り込まれたら安全対策なんてできやしない

 ――JCOの事故のとき、半径350メートル以内の住民の避難を要請した

 考えてみたら、安全規制体制が何もできてない国だと思った。安全神話を宣伝する中で自らをむしばみ、非常に怖いものを扱っているという意識が消えていた。こういう国は原発を持つべきじゃないと思い始めた。「日本は巨大科学技術をものにすることはできるかもしれない。しかしそれをコントロールする社会システムをつくることはできない国だ」と言った。
 そして、福島の事故で政府や原子力界の対応を見て、「これは駄目だ。この国は原発を持つ能力、資格は無い」と発言し始めた。

◎「ノー」は玄海の再稼働問題から

 ――原発は駄目と公に言い始めたのはいつ

 きっかけは佐賀の玄海原発なんだよ。11年6月18日に当時の海江田万里経済産業相が、原子力発電所の安全宣言をし、九州電力玄海原発2、3号機の再稼働問題となったわけだ。「何を言うか」と。まだ福島の事故から3カ月。何も落ち着いておらず原因究明もされてない。何も反省していないのかと。それでもう、「ノー」と言うぞと。

 ――足元に原発があっても「なくせ」と言える?

 (脱原発を決めた)ドイツの決心と同じ。経済的な価値より倫理を大事にすると。原発は順調に動いているときはいいが、どこかで事故が起きれば、自分の所は関係ないと言い切れない。不安定で危険性が多く、安定性に欠ける巨大なものに依存していて将来はあるのかねと。

 ――3・11のとき、東海第二もあと70センチ津波が高いと危なかったそうだが

 全電源喪失だな。
 あのとき、(非常用ディーゼル発電機などを冷ます海水が通る管につながるポンプがあるエリアの)6・1メートルの防潮壁のところへ5・4メートルの津波が来た。(壁には工事中で穴があり)ポンプ3台のうち1台が水没した。また、(原子炉の圧力を下げる)主蒸気逃し弁というものを170回も開け閉めした。何とか3日半かかって冷温停止した。外部電源が回復したからでもあるが。
 実態を聞いたときはぞーっとした。東海村は5キロ圏内。30キロ圏内は約100万人いて、(県庁所在地の)水戸市や日立市は全域が入る。避難計画なんていってるけれども、圏外に出たところで100万人はどこに避難するの? 原電は補償も賠償もできないわな。国もできないと思ってるよ。
 考えてみりゃ、うぬぼれた国だよな。俺たちは技術は優秀だ、労働者の質も高い、だから日本では事故は起きない、と。こういう国で原発を持っちゃいけない。しかも地震国で。



 ――東海第二の廃炉を提案した

 11年10月に細野豪志原発担当相に会って、廃炉にしろと言った。翌年には枝野幸男経済産業相にも。玄海だって町のことばかり考えてはいけない。周りには唐津、長崎県の松浦、佐世保まであるんだから。

 ――科学には限界があることを分かるべきだとも言っている

 日本人の場合、科学的な精神がない、技術先行だと思っているんだよ。確かに細やかで熱心だから、いいものはつくる。でも、地盤は割れるかもしれない。大津波がくるかもしれない。そのときどうするとは考えてなかった、想定外だと。
 元々日本では過酷事故は起きないというのが安全審査や防災の指針の前提だったからね。電源が喪失しても8時間以内には回復する、多重防護されているから大量の放射能の拡散はほとんど考えられないと。こんなの科学的とは言えない。原子力を推進し、金もうけするために都合よく解釈しただけの話だ・・・

このページのトップに戻る