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医療・健康
朝日新聞社

徘徊高齢者、誰が見守る 昼夜出歩く認知症の人たちとどう向き合うか?

初出:2014年6月26日〜7月2日
WEB新書発売:2014年7月11日
朝日新聞

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 「24時間監視しろというなら、お父ちゃん、お母ちゃんにヒモをつけにゃいけんことになる」。2014年4月、外出し徘徊のすえ鉄道事故で死亡した認知症の夫をめぐる裁判で、妻の監督責任を問う判決が出た。「今日一日を乗り切りたい」家族や介護施設や地域は、目が離せない認知症の人とどう向き合えばよいのか。夫と外出中に行方不明になって50キロ以上離れた場所で保護された認知症の妻、若年性認知症の父が外で起こした損害の賠償金を払い続けた息子など数々の涙ぐましい実例をたどり、今後の課題を示す。

◇第1章 今日を乗り切る、それだけ
◇第2章 出たいなら一緒に行こか
◇第3章 施設の玄関、開けたいけど
◇第4章 迷っても、気づける町に
◇第5章 認知症の人とどう向き合うか


第1章 今日を乗り切る、それだけ

◎出歩く親、昼も夜も気が抜けない
 「腹減った」「腹減った」「腹減ったーっ」
 東京都青梅市にある一軒家。夕暮れ時、デイサービスから帰ってきた川鍋美津子さん(70)が甲高い声で叫び続けた。「まだだって言っているだろっ」。夫の健司さん(74)がたまらず、怒鳴った。興奮した美津子さんが食卓にあった湯飲みを手で払いのけると、健司さんのシャツがびしょぬれになった。
 おさまらない美津子さんは家の中をドスドス歩き回る。
 食事を遅くしようとするのは、早く食べて寝ると未明に起き、家を飛び出ることがあるからだ。健司さんは「病気だから仕方がない」と言いつつ「もう何年もこんな感じだから。ふつうの家がうらやましい、と思う時もあるよ」。
 「前頭側頭型」という、行動抑制がきかなくなるタイプの認知症だ。美津子さんの場合、興奮すると、ののしり、たたくといった症状もある。
 美津子さんは朝晩を問わず、いつ出かけようとするかわからない。デイサービスで過ごす時間以外、健司さんと娘の美佐子さん(42)は常に気が張り詰めている。



◎50キロ先で保護
 きちょうめんで我慢強い性格だったという美津子さんが発症したのは12年以上前。9年前の2005年には原因不明の頭痛を訴えて床を転げ回ることがあり、2年間、精神科病院の認知症病棟に入院した。
 いま要介護4。ひざが悪いものの、寝起きや歩行には支障がない。2年前の12年、健司さんと外出中、最寄り駅の近くでいなくなったこともある。4時間後、直線距離で50キロ以上離れた葛飾区で歩いているところを警察に保護された・・・

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