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文化・芸能
朝日新聞社

虹はなぜ7色なのか? 身近でありながら謎が多い自然現象をめぐる旅

初出:2014年6月23日〜7月4日
WEB新書発売:2014年7月31日
朝日新聞

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 「物理の授業で虹を教えないのは犯罪だ!」。マサチューセッツ工科大学(MIT)のウォルター・ルーウィン名誉教授はこういう。「誰もが目にしたことがある。だが、本当に見たことはあるだろうか。同じことは芸術についても言える。芸術を目にしたことはあっても、本当に見たと言える人はどれだけいるだろうか」。虹という漢字はなぜ虫へんなのか、文化によって色の分け方が異なる事情、アリストテレス、ベーコン、デカルト、ニュートンなど虹の謎に魅せられた研究者たちの系譜、あの大人気番組のアイコンが虹色である理由、性的少数者の権利を求める象徴になった由来まで、「虹」をめぐる面白ディープな研究読本。 

◇第1章 あなたは見たことがない
◇第2章 教えないのは犯罪だ!
◇第3章 本当に7色に見えますか
◇第4章 あふれては遠ざかる
◇第5章 寅次郎、幻の花道
◇第6章 「地震予知」はかなく消えた
◇第7章 つながらなきゃいられない
◇第8章 そこにはすべての色がある
◇第9章 並んで見ている別のもの
◇第10章 つかめない、でも感じられる


第1章 あなたは見たことがない

 虹はなぜ見えるのか。あの色は、どこからくるのか。古来、多くの科学者や哲学者が、そのなぞに挑んできた。見る、という不思議を解き明かす道のりでもあった。
 多くの伝承が、詩が、生まれた。旧約聖書のノアの箱舟の物語によれば、神が契約のしるしとして雲の中に虹を置いた。ほかにも天使の渡るみちだったり、竜蛇の化身だったり。足元に財宝が眠るという言い伝えもあった。
 期せず、つかの間現れる虹に、ひとは悠久の片思いを続けてきた。その片思いをたどってみたいと思ったのは、大きな虹を見たからだった。
 アフリカを取材していた2013年11月1日、政情不安の続くソマリア訪問を終え、ケニアのナイロビ空港に着いた。折あしくにわか雨に打たれ、振り返れば空港の建物の背後に虹がかかっていた。鮮やかな弧の外側に、薄い弧がもう一つ見えた。
 空港を出ると、遮る建物もなく、虹の脚が大地に刺さるようだった。ああ、虹に心動かされることも久しくなかった、と嘆息したものの、そんな心象もまもなく消えた。
 そのことを思い出して虹をたどりだしたのは1年あまりの後、南アフリカのマンデラ元大統領が死去したころだった。南アフリカは「虹の国」と呼ばれている。


 虹の情報を図書館やネットで探していたとき、米マサチューセッツ工科大(MIT)の名誉教授、ウォルター・ルーウィンさん(78)が物理学の講義に必ず虹を取り上げていると知った。大学の物理学と虹という組み合わせにひかれ、ネットで公開されている講義を見た・・・

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