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科学・環境
朝日新聞社

海を渡る新幹線 日本の誇りは世界へ飛び立てるか

初出:2014年7月14日〜7月16日
WEB新書発売:2014年8月14日
朝日新聞

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 「東海道新幹線開業から50年で蓄積してきた経験は世界共通の財産になる。世界に情報発信していく」。JR東海の葛西敬之名誉会長は2014年4月、設立されたばかりの社団法人「国際高速鉄道協会」(IHRA)の第一回会議を終え、記者会見で決意を述べた。世界初の高速鉄道として誕生した新幹線だが、途上国を中心に高速鉄道計画が進み、受注に向けた国際競争が激しさを増している中、日の丸技術の誇り・新幹線輸出に商機はあるのか。これまで唯一、輸出に成功した台湾高速鉄道の現状と、官民一体で巻き返しを図る日本の取り組みを探るレポート。

◇序章 新幹線、世界を走れ
◇第1章 日本流乗せ、台湾縦断
◇第2章 日欧混在、快走に弱点
◇第3章 減塩、終わらない挑戦


序章 新幹線、世界を走れ

 2014年6月下旬、南国の強烈な日差しが照りつける台湾・台南駅(台南市)。見慣れた流線形の列車が止まっていた。ただ、車体のラインの色は「新幹線ブルー」ではなくオレンジ。東海道新幹線の技術が初めて海を渡り、2007年に開業した台湾高速鉄道だ。
 日本の車両、電機メーカー、総合商社など計7社が連合を組んで受注に成功。数千人の日本人スタッフを送り込み、7年の歳月をかけて作り上げた。
 14年10月、東海道新幹線は開業から50年を迎える。事故で1人の死者も出していない安全性や1時間15本の高頻度運行、高い定時運行率、早期地震検知を始めとする防災システム――。日本は他国に類を見ない高速鉄道の技術を培いながら、後発の欧州に輸出でシェアを奪われ続けてきた。
 14年春、これまでの劣勢を跳ね返すべく、日本の鉄道界が動き始めた。



第1章 日本流乗せ、台湾縦断

◎定時到着99% 10分で清掃
 1964年に日本で新幹線が開業してから43年の時を経て、台湾高速鉄道(高鉄)=キーワード=は誕生した。
 北のターミナル駅・台北駅(台北市)。地下2階の高鉄のホームに下り、日本の新幹線によく似た列車に乗り込んだ。東海道新幹線の700系がベースの700T。行き届いた空調に、白色系の照明。2人掛けと3人掛けの座席配置、荷物棚の形状、座席のテーブルに書かれた車内案内の図案――。車内に入ると、日本色はさらに濃くなった。高鉄の広報担当、周姚君(チョウヤオチュン)さんが「新幹線にそっくりでしょう。車体は川崎重工の製作です」と笑顔を見せた・・・

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