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教育・子育て
朝日新聞社

ここでだけ、あの子は笑顔 「プレーパーク」に生きる子どもたち

初出:2014年6月25日〜7月12日
WEB新書発売:2014年8月21日
朝日新聞

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 貧困家庭、不登校、障害児……生きづらさを抱えながら懸命に生きている子どもたちがいる。親や先生には言えず、家庭や学校に居場所をなくしてしまう。「つらい思いを抱えている子に来てほしい」と開かれた静岡県富士市の「冒険遊び場たごっこパーク」には、そんな子たちの他では見せない笑顔、小さな子への優しさ、人に役立つという喜びがあふれている。誰もを受け入れる空間で、いつしか前を向き、歩み始める自信をまとっていく。

◇第1章 ここでは、みんな明るい
◇第2章 役に立てた、笑顔思い出せた
◇第3章 学校にも家にも居づらくて
◇第4章 お泊まり会、うれしくて眠れず
◇第5章 愚痴言える心のよりどころ
◇第6章 仲間のおかげでキレなくなった
◇第7章 みんなが待っていてくれる
◇第8章 ありのままの、自分の居場所
◇第9章 虫好きな自分、認めてくれた
◇第10章 「問題児」演じなくていい
◇第11章 家族ってこんなに話をするんだ
◇第12章 もらった優しさ、私がつなげたい


第1章 ここでは、みんな明るい

 2014年5月下旬、よく晴れた日曜日。静岡県富士市の市営公園の一角が30人ほどの親子でにぎわっていた。隔週の土日限定のプレーパーク(※)「冒険遊び場たごっこパーク」が開かれていた。「たごっこ」は、近くの「田子(たご)の浦」の子、の意味だ。
 約1・3ヘクタールの広場では、たき火でイモを焼く子、近くの川に飛び込む子、木登りする子、ドラム缶風呂を沸かして温まる子……。パークを企画するNPO法人「ゆめ・まち・ねっと」の「たっちゃん」こと渡部達也代表(48)と、妻で「みっきー」こと美樹事務局長(51)が見守る中、幼児から若者までが一緒になって駆け回る。
 パークは14年、10周年を迎えた。親の申し込み不要で誰でも無料で参加できるため、地域から孤立した貧困家庭の子や不登校の子、障害のある子など生きづらさを抱えた子が続々とやってくる。常連で、県内の私立高校3年の男子生徒(17)もそんな一人だ。オープンしたばかりの小学2年の頃から通う。
 男子生徒はこの日、青いTシャツにジーンズ姿で、年代物の自慢のラジオを携えてやってきた。たき火を囲みながら、外国語放送を受信して皆に披露。仲間たちとの会話を楽しんだ。


 幼い頃、発達の遅れを指摘された。勉強やコミュニケーションに苦手な部分があった。文字を覚えるのが不得意で、中学時代には英語の宿題が20ページもたまり、罰としてグラウンドを20周走らされた。授業中に寝てしまうことが多く、親と学校に呼び出されたこともある。
 必修の部活動では、走り込みで決められた時間内にゴールできず、「連帯責任」として部員全員がグラウンドをもう1周走らされた。「また、お前のせいだ」。仲間から責められた。
 小・中学を通して同じクラスの子に嫌なあだ名で呼ばれるなどのいじめを受け、友だちはできなかった。人と顔を合わせるのがいやで、廊下の壁に頭をつけるようにして歩いた。
 家では怒られてばかりだった。病気の母に代わり、面倒をみてくれた会社員の父は「息子に何とか高校くらいは卒業させてやりたい」と思うがゆえに勉強には厳しく、時には手も出た。いじめられていることは、父には言えなかった・・・

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