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朝日新聞社

電気の魚屋さん 電力自由化に立ち上がったベンチャー企業

初出:2014年7月23日〜26日
WEB新書発売:2014年8月21日
朝日新聞

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 〈親愛なるエジソンさま わたしたちは、徹底的に電気のムダをなくし、異次元の効率化を実現します。そして人びとを節電から開放してみせます〉。2016年に迫る家庭向け電力販売の自由化、原発の再稼働問題などで揺れる電力業界に、旋風を巻き起こしているベンチャー企業「エナリス」は、業界の「魚屋さん」を目指す。街の魚屋さんが、お客の好みにあわせ、切り身にしたり刺し身の盛り合わせをつくったりするように、大手電力、新電力、再生エネルギーの中から、お客の好みに合わせた電力を売る。その背景には、中学時代に自家発電機を作った「電気オタク」の情熱があった――逆境をチャンスに変える、ベンチャー魂を描き出すノンフィクション。

◇第1章 「電気オタク」スイッチON
◇第2章 誓った「実行力」、節電に奔走
◇第3章 2児の母、震災で電力に転身
◇第4章 電力使い放題の夢へ、いざ


第1章 「電気オタク」スイッチON

◎需要にあわせて電力売買業界に旋風
 東京駅の真ん前にある「新丸の内ビルディング」は、地上38階、地下4階の巨大ビルだ。オフィスやお店で、たくさんの電気が使われている。
 ビルが眠る深夜は、東京電力の電力だけでまかなう。だが、朝6時すぎ、500キロ北にある、小さな発電所からの電力も使われ始める。猛暑のお昼、ビル全体の4分の1をこの発電所の電力でまかなう。
 その発電所は、2014年春、岩手県宮古市にある製材所「ウッティかわい」が、東日本大震災からの復興のためにはじめた。使えない間伐材、木くずなどを山、製材所、木工所から集め、一時間あたり計10トンを燃やしつづけて電気をつくる「バイオマス発電所」だ。
 新丸ビルの持ち主、三菱地所で担当する井上成(しげる)(50)はいう。「被災地からの電気を使うのは、復興への願いをこめるため」
 宮古の発電所づくりを手伝い、都心に電力を送る仕組みをつくって運営するのは「エナリス」という会社。業界の「魚屋さん」を目指す電力ベンチャーだ。街の魚屋さんは、お客さんの好みにあわせ、切り身にしたり、刺し身の盛り合わせをつくったりする。
 エナリスは、大手電力はもちろん、新規参入した新電力、再生可能エネルギーの発電所から、電気を仕入れる。お客さんの好みにあわせ、丸ごと、または組み合わせて売る。原発再稼働に反対の人は大手電力以外から、環境への優しさを求める人なら、バイオマスなどの再生エネを買えばいい・・・

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