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朝日新聞社

6歳のヒバクシャ 「集団的自衛権は要りません」魂の訴え

初出:2014月7月27日〜8月10日
WEB新書発売:2014年8月21日
朝日新聞

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 当時、6歳だった。光と爆音が襲った。見回すと、妹が、瓦礫に埋まって気絶していた。白いシャツを触ると、ボロッと灰のように崩れた。皮膚は血だらけ。気づくと自分の下腹部に、竹の棒が突き刺さり、白い半袖シャツが、真っ赤な血で染まっていた――長崎原爆遺族会会長の正林克記さんは、被爆者としての全体験を賭けて、安倍晋三首相と対峙する。「集団的自衛権はいりません。取り返しのつかない事態にならぬよう、私たち被爆者は絶対反対です」。悲しみの記憶を振り返る、魂のルポルタージュ。

◇式典で恒久平和誓った
◇安全と信じ長崎へ転居
◇セミ捕り中に妹と被爆
◇腹部に竹の棒が刺さる
◇「死ぬばい」見捨てられた
◇コイの血と卵食べ養生
◇残る傷痕、後遺症おびえ
◇市役所就職、仕事に没頭
◇被爆者援護の担当課に
◇差別・無理解と向き合う
◇退職後、原爆遺族会長に
◇がん、あと少しで手遅れ
◇更生の場で折り鶴作り
◇集団的自衛権に「懸念」
◇平和へ声を上げ続ける


◎式典で恒久平和誓った

 2007年8月9日の平和祈念式典。正林克記(まさばやしかつき)さん(75)は被爆者を代表して「平和への誓い」を読み上げた。6歳で被爆し、腹に竹が刺さったまま妹を背負って立ち尽くした経験、今も放射能の影響に苦しむ被爆者の現状を訴えた。そして、「世界の恒久平和を願って、足元から微力を尽くす」と誓った。
 目の前には第一次政権を担っていた安倍晋三(あべしんぞう)首相がいた。政権に復帰した安倍首相が進める解釈改憲による集団的自衛権の行使容認などを見ていると、「平和への願いが通じていなかったのかと、むなしくなる」。行使容認で他国に武力行使をすれば復讐(ふくしゅう)心が起こり、再び原爆が使われかねないと心配する。
 その安倍首相と2014年8月9日、長崎原爆遺族会長として面会する。解釈改憲に反対し、平和憲法にのっとり近隣諸国との緊張を解くことに力を注ぐべきだと訴えるつもりだ。「被爆者として、残り少ない時間を使いたい」との思いから、被爆者援護や平和活動に取り組んできた・・・

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