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朝日新聞社

JR北海道は生まれ変われるか 汚名返上のためのラストチャンス

初出:2014年9月20日〜10月9日
WEB新書発売:2014年11月13日
朝日新聞

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 2013年から14年にかけて、貨物列車の脱線事故、レールの異常放置、点検記録の改ざんなど、無数の不祥事に見舞われたJR北海道。背景には国鉄民営化当時の会社の成り立ちにからむ無理な経営スキームと、全線区の7割を占めると言われる不採算路線による鉄道経営の慢性的赤字がある。JR北海道は「地域の足」を確保しつつ利用者の信頼を回復するという難題にどう取り組むべきなのか? 安全対策を強化した五カ年計画の期限を年末に控えた今、安部誠治(関西大教授)・阿部等(ライトレール社長)両氏の提言を交え、危機に立つJR北海道の行く末を占う。

◇第1章 安全投資、見えぬ道筋
◇第2章 路線の7割、利用低迷
◇第3章 サービス改善、道は支援を/関西大社会安全学部教授 安部誠治さん(62)
◇第4章 知恵絞り需要掘り起こせ/ライトレール社長 阿部等さん(53)


第1章 安全投資、見えぬ道筋

◎巨額赤字、資金確保は
 「私たちが、決して、忘れてはならない日」
 JR北海道の島田修社長が肝に銘じる「9月19日」がやってきた。
 午前9時半、札幌市の本社。約140人の保線社員が真剣な表情で講話に耳を傾けた。演壇には須田征男(ゆきお)会長。JR東日本で常務を務めた保線の専門家だ。保線の仕事を医者の仕事にたとえながら、「時間はかかりますが、日本で一番適切に管理された線路になるよう一緒に頑張りたい。線路を愛する『名医』になっていただきたい」と訴えた。
 1年前、2013年のこの日、JR函館線大沼駅で貨物列車が脱線。その後、レールの異常放置や点検数値改ざんなどが相次いで発覚した。
 JR北は、この日を「保線安全の日」と位置づけ、函館や旭川、岩見沢など道内12のすべての保線所を幹部が手分けして回り、安全第一を再確認した。


 車両の重量は1両20〜40トン。列車が通るたび、レールは少しずつゆがむ。レールをミリ単位で正しい位置に保つ保線業務は、鉄道の安全を支える要といえる。
 JR北が保線対象としているレールは約3千キロ強。多くは専用車両でゆがみをチェックするが、2割程度は保線社員が手作業で点検する。
 10メートルの黄色の糸の両端を2人がレールにあて、もう一人が中央部に折り尺をあててゆがみを点検し、数値を手書きで記録する。手で押すタイプのレール検査機器を使った手法も手書きで記録していたため、データ改ざんの余地があった。
 そこでJR北は14年3月、データを自動で計測し、記録する新型の検査機器を導入した。レールの上に乗せて手押し車のように押して歩き、異常があると「ピコン、ピコン……」と音を鳴らして知らせる。「手書きの数値をパソコン入力する手間も省け、作業が楽になった」。現場の社員は言う。
 ただ、すべて手作業で点検するケースは残る。JR北は改ざんを防げなかった反省から、コンプライアンス(法令順守)研修も繰り返し実施している。

 JR北は14年度の事業計画で、安全投資に約279億円、レール交換や車両修理などをまかなう修繕費に260億円を盛り込んだ。いずれも過去最大規模だ。
 だが、14年度の鉄道事業が過去最大の378億円の営業赤字を見込むなか、12年度から5年間の中期経営計画で定めた740億円の安全投資について、国から見直しを求められている。修繕費も加えた計画策定が必要となっているが、資金をどう工面するのか、道筋は見えていない。
 1987年に国鉄が分割民営化した際、JR北は鉄道事業の赤字を補填(ほてん)するため、国から経営安定基金6822億円を受け取った。だが、バブル崩壊後の低金利で運用益は想定の半分ほどに減ったという。
 枕木を強度の強いコンクリート製に取り換え、継ぎ目の少ないロングレールに置き換える――。慢性的な資金不足の中、これらの取り組みは進まず、老朽化した車両も使い続ける。そうした影響もあるのか、脱線や発煙トラブルはなくならない・・・

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