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経済・雇用
朝日新聞社

地銀サバイバル 金融庁が「本気」で進める大合併時代

初出:2014年11月12日〜11月15日
WEB新書発売:2014年11月27日
朝日新聞

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 2014年10月、地元密着型の地方銀行で構成する第二地方銀行協会の講堂に、全国から頭取たちが集まった。暗い室内で、金融庁幹部は「合併・統合のすすめ」とも受け取れる「意見」を述べた。「他の地銀との連携や再編も選択肢の一つだ」。細溝清史・金融庁長官らの見解表明はまるで、「申し渡しの儀式」のようだった――。金融庁の「地銀再編」へ向けた猛プッシュは、前長官の畑中龍太郎氏時代からだが、その流れがここへきてさらに強まっている。2014年7月、8月、そして、9月。金融庁の検査官は、全国106の地銀を次々と訪問、経営状況の聞き取りを続けた。地方金融の現状は、いまどうなっているのか? 金融庁は、地方銀行を、どうしようとしているのか。風雲急を告げる実態を追った。

◇第1章 地銀再編、金融庁の本気
◇第2章 消えた県境、金利下げ消耗戦
◇第3章 統合したけど、一つには…
◇第4章 きめ細かい寄り添い、カギ
◇第5章 五輪、つかの間共存の夢


第1章 地銀再編、金融庁の本気

◎「霞が関があおろうとしている」
 それはまるで、申し渡しの儀式のようだった。
 比較的小さいが地域に根ざす銀行でつくる第二地方銀行協会。2014年10月16日、東京都内に構えた協会のビルに、全国から頭取たちが集まった。薄暗い講堂の4列に並んだ長机から、金融庁の幹部を見上げていた。


 「他の地銀との連携や再編も選択肢の一つだ」。金融庁長官、細溝清史が投げかけた。
 月に一度開かれるこの集まりは意見交換の場とされるが、実態は少し違う。監督する側の金融庁の考え方が、監督される側の銀行へと、やんわり伝えられる。この日は、銀行の経営状況を洗い出すのが仕事の検査局長、遠藤俊英も苦言を述べた。「金利競争に陥らず、差別化した戦略に取り組む銀行は少ない」
 人口が減り、工場が海外へと逃げ出す。多くの地銀が、残された企業や個人に群がり、低金利での融資を競って体力をすり減らす。そんな状況を問題視し、生き残り策の一つとして合併や統合を勧めたのだ。
 出席したある地銀トップは割り切れない気持ちで2人の言葉を聞いていた。「でも、金利を下げなければ他の銀行に融資を奪われてしまうじゃないか」。そしてこうも思った。「まだ自前で行ける。再編に動くつもりもない」


 地銀を再編し、体力強化を図ることは、金融庁が以前から検討してきたことだ。特に細溝の前任で3年間長官をつとめた畑中龍太郎は、再編推進に熱心だったとされる。その流れが今、さらに強まっている。
 7月、8月、そして9月。金融庁の検査官たちは、全国106の地銀を次々と訪問し、頭取や役員らに経営状況などの聞き取りを続けた。銀行に出向くのが検査官の仕事とはいえ、その規模は過去に例がない。前後して経営の強みや弱み、融資戦略、事務の効率化など数多くの項目についてアンケートも取っていった。分析の精度を増すためだ。
 ある地銀幹部は聞き取り調査での検査官の言葉が忘れられない。「悪い銀行をあぶり出そうとしている」。地銀側には疑心暗鬼が強まる。こうやって我々を再編に追い込もうとしている――。
 結果は出始めた。14年11月4日、横浜銀行と東日本銀行が経営統合に向かって協議していることが明らかになった。
 この組み合わせから、いくつかの要素が読み取れる。一つは、東京の第二地銀・東日本銀は、多くのライバル行から強い攻勢にさらされ、難しい状況にあったこと。それから、地銀の雄といわれる横浜銀ですら、土俵を広げようと動きだしたこと。
 もう一つある。横浜銀頭取の寺沢辰麿と、東日本銀頭取の石井道遠が、ともに財務省(旧大蔵省)出身だということだ。入省年次が3年違い。2人とも局長や国税庁長官を務めてから、地銀トップに天下りしている。「『霞が関』が再編ムードをあおろうとしている」。ある関東の地銀首脳は、そう言った。
 11月10日には、熊本県の肥後銀行と鹿児島銀行が経営統合することも発表された。それぞれの県に君臨し、経営が悪くもなければ、弱ってもいない。それでも踏み切った。「これから働き手の人口が減る。預金が減る。貸し出しが減る。10年後では遅すぎる・・・

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