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政治・国際
朝日新聞社

日中首脳会談に笑顔なし それでも関係改善なければ困る両国の政経事情

初出:2014年11月11日〜11月13日
WEB新書発売:2014年11月27日
朝日新聞

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 日本の安倍首相と中国の習国家主席が握手を交わすも、そこには笑顔も国旗もなかった。冷え込んだ両国の関係を象徴する印象的な写真が世界中に伝わった。2年半の断絶を超え、なぜ25分間の首脳会談は実現したのか。日本政府が強調する意義、成果とは何か。一方、尖閣問題・歴史認識で対日不信をいだく中国側に、どんな思惑があったのか。8年前の「戦略的互恵関係」は復活し、停滞する両国の経済は好転するのか……。首脳会談までの背景を詳細にたどり、関係改善を模索する両国の事情と今後の影響を政治・経済面から探る。

◇序章 遠い8年前の「原点」
◇第1章 対話の先、日中模索
◇第2章 歓迎・懐疑、異なる反応
◇第3章 経済の熱、戻ってくるか


序章 遠い8年前の「原点」

 笑顔なき握手だった。安倍晋三首相が話しかけたが、習近平(シーチンピン)国家主席は無言のまま。相好を崩さず視線をそらすと、首相は気まずそうな表情を浮かべた。
 今回の日中首脳会談は、ぎりぎりの交渉で実現した。外交当局間の調整は、常に「ガラス細工」のようなもろさをはらんでいた。
 ようやくたどり着いた会談なのに、両首脳から達成感は伝わらない。2014年11月10日の夕食会。中国の伝統衣装を着た首相夫妻を習氏は握手で出迎えたが、各国首脳と親しく話すのに比べると、やはりぎこちなさが残った。
 2人の間に生じる「ずれ」は、会談を行う思惑の違いから来ている。
 日本は何より両首脳が会うことにこだわった。逆に言えば、それがほとんどだった。首相は会談を終えると8年前に訪中した際に打ち出した「戦略的互恵関係の原点に立ち戻る」と記者団に語った。会談に同席した加藤勝信官房副長官は「期待通りのやり取りができた」と成果を強調した。首相が会談中、日中友好がテーマの舞劇を東京で鑑賞した話も持ち出した。
 だが、中国は「会えば良し」ではなかった。日本に伝えるべきこと、交渉すべき課題を抱えていた。習氏は、決して友好ムードの演出にはこだわらなかった。
 国営中央テレビは冒頭の握手シーンを5秒流したのみだった。習氏が笑顔で各国首脳を出迎える姿が報じられるなか、低調ぶりが際だった。国営新華社通信も、習氏が歴史問題に力点を置いたことを配信した。習氏が安全保障分野にも踏み込み、「慎重な軍事安全保障政策をとるよう」求めたとも報じた。
 会談は関係改善の「第一歩」であると両首脳は語った。だが、同時に、首相が言う「原点」に戻るにはまだ遠い道のりがあることを示す機会にもなった・・・

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