【お知らせ】WEB新書は閉店しました。

医療・健康
朝日新聞社

「家族代行」はいかがですか? 人口減が突きつける老いの現実

初出:2014年10月12日〜10日15日
WEB新書発売:2014年12月4日
朝日新聞

このエントリーをはてなブックマークに追加

 人口が減り続けている日本。それは同時に高齢化が加速することも意味する。都市部では高齢者が孤立化し、地方では過疎化がさらに進む。ひずみは介護と医療の現場に及び、その過酷さは増すばかり。高齢者の生活を支える施設が足りず、自治体も対応しきれなくなる中、注目されるのがNPOや自治体、有志の連携によるコミュニティーだ。介護と医療への意識を変革して課題に挑み、存在感を見せ始めた「地域」を東海3県で見た。

◇第1章 独居、「家族代行」が頼り
◇第2章 在宅支える「団地力」
◇第3章 過疎の医者、予防の網
◇[インタビュー]在宅助ける仕組みを


第1章 独居、「家族代行」が頼り

◎急速な高齢化 行政対応しきれず
 名古屋市の中心部から電車で20分ほどの住宅街。2014年9月19日の昼過ぎ、平屋建て住宅のちゃぶ台を囲み、独り暮らしの女性(87)の話にNPOの女性スタッフが笑顔で耳を傾けていた。


 「お墓参りに行くと花がいるけど、向こうで親がやってくれとるかもしれん」。認知症の女性は、亡くなった両親が生きているかのように話す。夫を約30年前に亡くし、子どもや近しい親戚はいない。
 支援するNPOは、身寄りのない高齢者を支える同市の「権利擁護支援ぷらっとほーむ」。この女性の成年後見人として銀行口座や郵便物などを管理する。
 「お薬飲んだ?」「お財布の中は大丈夫?」。訪問の度に確認する。むずかる女性を病院に連れて行く。外出で道がわからなくなって警察に保護された女性を迎えに行くこともある。
 2年前、女性の介護担当者に頼まれ、支援を始めた。認知症になる前の女性をほとんど知らない。それでも、人生の最期の日まで「家族の代わり」として寄り添う。

◎希薄な人間関係
 「ぷらっと」は06年、市内で独り暮らしの高齢者を見守る民生委員たちが立ち上げた。サービスは、病院や福祉施設に入る際の身元保証、墓参り、家の管理と幅広い。会員数は約400人で、発足時から9倍ほどに増えた。
 事務所は同市緑区の鳴子団地にある。スーパーマーケットが閉店したままになっていた1階を借りた。
 倉庫に積み上がった衣装ケースに、仏壇や家族の位牌(いはい)、杖、赤茶けたアルバムなどがぎっしり。市内で身寄りのない高齢者が施設に移る際、私物を預かる。鳴子団地で独り暮らしだった会員のものもある。
 高度経済成長期に入居が始まった団地で、老いは進む。「家族力がなくなっている。誰かがやらなければ」。「ぷらっと」の糸柳元英理事(71)は話す。
 3大都市圏の人口減少は地方より遅れるが、その手前で急速に高齢化する。名古屋市に住む65歳以上で、独り暮らしは10年に約9万9千人と20年前の3倍になり、25年には16万1千人になる。認知症は10年の4万3千人から25年の7万5千人に増える見通しだ。
 市は14年度、高齢者世帯の買い物などをボランティアが支える仕組み作りに取り組む。ただ、身元保証などには関わらない姿勢だ。
 「家族関係が希薄になる時代に、実績のある団体が家族代わりをするのはやむを得ない」と市の担当者は話す。「利益優先の業者を利用者が見極められるか」との不安はあるが、行政は対応しきれていない・・・

このページのトップに戻る