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政治・国際
朝日新聞社

大義なき衆院選の争点検 3本の矢、地方再生、解釈改憲、女性の活躍…

初出:2014年11月22日〜11月26日
WEB新書発売:2014年12月11日
朝日新聞

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 アベノミクス(3本の矢)の恩恵は大企業や官僚のためにあるのか。経団連に法人税減税を約束する一方、日本の労働者の7割が働く中小企業に増税を画策。猛反発でいったん延期されたものの、中小企業の声は政治に届くのか。格差が広がり、恩恵を実感できない地方をどう活性化させるのか。ほか、安全保障政策と解釈改憲、財政再建と社会保障改革、女性の活躍推進など、衆院選の争点を多角的に分析。日本政治の今後4年間を問う。

◇第1章 アベノミクス、恩恵と落胆 
◇第2章 地球儀外交、戦略と成果は
◇第3章 増税延期と「不都合な真実」
◇第4章 地方の未来図、描けるか
◇第5章 「女性の活躍」本音聞きたい


第1章 アベノミクス、恩恵と落胆

 社会の亀裂や格差を身近に感じることが増えた。
 大企業と中小企業。アベノミクスをかみ砕くと、こんな風になる。
 中小企業のみなさん、円安や株高で大企業は最高の利益を上げています。これから大企業は、みなさんへの仕事を増やします。大企業の社員は消費を増やします。もう少しの辛抱です。必ず恩恵が来ます。
 福岡県で20人ほどの社員を率いる町工場3代目は2014年、1万円あまりのベースアップをした。消費増税3%分の生活費増を補うのが社長の責務、と考えたため。そして、ベア実施を呼びかける安倍晋三首相の思いに共感したからという。
 しかし、消費税が8%になって以降、仕事が減り、円安で材料費が値上がりした。14年4月から10月までで単月黒字は3カ月しかない。
 おなじ福岡県には、トヨタ自動車と日産自動車の工場がある。トヨタは9月中間決算で純利益が1兆円を超える過去最高を記録、日産も2千億円を上回る。
 円安を追い風にした2社の好調ぶりに3代目はこぼす。「政治は大企業の声ばかりを聞いていませんか。アベノミクスの恩恵は本当に来ますか」
 安倍政権は、経団連などに法人税減税を約束している。国際競争力を高めるのが狙いだ。税収が減る分の穴埋めをどうするか。政府税制調査会が出した案は中小企業への増税だった。一つの柱が、社員の給与総額などにかける外形標準課税を大企業だけでなく中小企業にも広げることだった。
 中小企業の経営者たちは猛反発した。大企業をいっそう元気にさせ、中小をさらに苦しめるのかと。ベアで給与総額を増やした経営者からは「だまし討ちか」との声も漏れる。
 この中小企業増税は経団連も反対し、15年度の適用は見送られたが、反対の署名運動が14年夏始まった。いずれ蒸し返されるのではないかとの懸念が消えないからだ。署名は20万を超えた。目標は100万人だ。「それだけ集めないと、中小企業の声は政治に届かない」(中小企業団体の幹部)と心底考えるからだ。
 アベノミクスの効力を示すカラータイマーは、点滅を始めている。
 一番大切なのは中小企業のモチベーションを上げることだろう。金融や税制の面から支え、企業同士の連携を促すなどして「中小企業が主役」と位置づけることが必要だ。国内の会社の99・7%を中小企業が占める。労働者の7割近くが働き、地域社会を支える。
 選挙になると、どの政党も「中小企業は大切」という。立候補予定者は地域で生の声に耳を傾け、論戦をしてほしい。働く人にとっても経営者にとっても、自分の声を一票に乗せるチャンスが来た・・・

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