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朝日新聞社

過労死するまで働きますか? 長時間労働がやめられない病根

初出:2014年10月24日〜11月28日
WEB新書発売:2014年12月11日
朝日新聞

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 「自分がいないと会社は回らない」。そんな思いで病気でも職場に行ったり、残業や休日出勤をしたりしていませんか。でも、きっと大丈夫。多少の迷惑はかかったとしても、アナタが数日いなかったからといって会社は潰れたりはしません。よっぽどのワンマン経営者でもない限りは。先進国の中では、世界一の労働時間を誇る日本。働きすぎを是正しようとする取り組みは数多いが、残念ながら成果はとても少ない。働いても働いても、幸福感が薄いのは何故なのか。そんな労働後進国に効く「脱・働きすぎ」への提言集。

◇第1章 過重労働、違法とすべきだ
◇第2章 成果主義が招く過労死
◇第3章 短時間での成果に評価を
◇第4章 労働時間自ら選べてこそ
◇第5章 職務中心「ポスト型雇用」に
◇第6章 残業前提、経営者の甘え


第1章 過重労働、違法とすべきだ

労働政策研究・研修機構 主席統括研究員
濱口桂一郎さん


◎正社員の負荷深刻
 ――日本の労働時間の実態をどう見ますか。
 「働きすぎです。ここ20年ほどで、過労死につながりかねない働き方が普通に見られるようになってきました。命や健康を守ることが喫緊の課題です」

 ――長時間労働はなぜ定着したのでしょう。
 「1970年代の石油ショックがきっかけです。景気が冷え込んだ際に、国が助成金を出して雇用を守り、企業は社員を解雇するのではなく、残業を減らして対応したのです。その代わりに景気が回復しても正社員は増やさず、少ない人数で長い時間働くことにしました。政労使ともに、解雇を避けることを最も優先した結果、終身雇用と長時間労働がいわばセットになった『日本型雇用システム』が確立したのです」

 ――長時間労働は、企業社会の成り立ちに深く関わっているのですね。
 「日本社会は、ある意味で長時間労働を合理的に選択したのです。ただ90年代以降、企業は景気変動に応じていつでも調整できる非正規雇用を増やし、正社員をさらに少数に絞り込みました。昔に比べ正社員の負荷は高まり、働きすぎはより深刻になっています」


 ――日本の労働時間の規制の仕方に問題はないのでしょうか。
 「労働基準法では、1日8時間、週40時間を超えて労働者を働かせてはならないと決められています。罰則もあります。例外として、労基法36条に基づく労使協定(36協定)を結べば、1日8時間を超えても労働者を働かせることができます」
 「しかし、『ノー残業デー』という言葉がよく使われていることをみても、日本企業では残業が当たり前で、『残業なし』は珍しいのです。そして日本の法律では、これ以上働かせたら違法になるという労働時間の上限は存在しません」

◎EUの休息時間も一案
 ――どうすればいいのですか。
 「脳・心臓疾患の労災認定では、発症前の1カ月間に100時間または2〜6カ月平均で月80時間を超える時間外労働は明らかに過重と基準が示されています。少なくとも、労災認定されるほどの長時間労働は違法とするべきです」
 「欧州連合(EU)では勤務を終えた後、次の勤務が始まるまでに最低11時間の『休息時間』を労働者に保障することを義務づけています。この制度を採り入れるのも一案でしょう。ただし、11時間では最低限の睡眠や食事、通勤などを確保するのが精いっぱいで、家事や育児、余暇などはまったくできません。それでも日本では、規制を嫌う企業から『そんなのできるわけがない』と反発を受けているのが現状です・・・

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