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朝日新聞社

米国の原発離れが始まる 世界最多の商用原発を抱える米国の曲がり角

初出:2014年11月12日〜11月25日
WEB新書発売:2014年12月11日
朝日新聞

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 「価格競争の激化で、原発は採算が取れない」。100基超の原発を抱えていた米国では2013年だけで4基が閉鎖するなど、新たな動きが見られる。背景には6割以上の原発が老朽化し、シェールガスなど新エネルギーの台頭がある。福島原発事故の影響も大きく、加州では住民の反対で原発を閉鎖した会社も。閉鎖で困るのは原発マネーで生きてきた立地地域だが、廃炉が地域に与える影響も問題だ。一方、テロ対策や除染、放射性廃棄物の処分場も未解決のまま……。日本とよく似た米国の原発事情を多角的に探る渾身のルポ。

◇第1章 原発経営、苦境の閉鎖
◇第2章 閉鎖、どう乗り越える
◇第3章 福島の影響、大きすぎる
◇第4章 消えぬ不安、閉鎖後も
◇第5章 事故時、「パニックに」
◇第6章 住民、大きなストレス
◇第7章 安全基準、満たしても
◇第8章 「劣化ウラン」、反対も
◇第9章 ウラン開発計画、再び
◇第10章 賛成・反対・歌も自由


第1章 原発経営、苦境の閉鎖

 米国北東部、カナダと国境を接するバーモント州唯一の原発バーモントヤンキーが、閉鎖される。事業者で電力大手のエンタジーが2013年8月、14年中に運転を永久に止めると発表した。
 出力65万キロワット1基。関西電力美浜原発2号機と同じ1972年に運転を始めた。運転から40年を目前にした11年、米原子力規制委員会(NRC)から20年間の運転延長の許可を得たばかりだった。
 バーモントヤンキーの広報責任者マイケル・トゥミー氏は「運転にはまったく問題がなかった」と強調し、「天然ガスの普及でエネルギー価格が下がり、小さな原発は採算が取れないと判断した」と説明した。



 立地する州南部のバーノン町は人口約2200人、面積は福井市の1割ほどで、のどかな田園風景が広がる。
 閉鎖の発表から2カ月後、原発近くの小学校に州議会下院議員たちが集まった。閉鎖で地域はどうなるのか、地元の経済団体やエンタジーから意見を聴くためだった。
 町議会のパティ・オドネル議長は、州下院議員たちに言い放った。「町が原発を受け入れたからこそ、州に何十億という税収が入ってきた。今度は州が町を助けてください」
 日本の立地地域と同じように、原発からの税収は町の税収の半分近くを占める。エンタジーは周辺地域の約100団体にも寄付金を出してきた。
 町があるウィンダム郡によると、バーモントヤンキーで働く人は約630人。そのうちバーノン町民は80人ほどだ。家族や子どもを含めると300人近くになり、町人口の1割以上を占める。彼らは、地域のサッカーチームの指導者や消防団、ボランティア活動を担ってきた。オドネル町議長は言った。「彼らがずっとここに住めるよう、雇用を作ってほしい」
◎天然ガス台頭、価格競争激化
 米国では最大104基の商用原発があったが、13年だけで4基が閉鎖になった。バーモントヤンキーを含めても、運転中なのは100基を割り込む。
 米国で総発電量に占める原発の比率は約2割だ。しかし運転開始から30年を超える古い原発が6割以上にのぼり、地下深くから採掘されるシェールガスなど新たなエネルギーの台頭で電力の価格競争が激化。事業者は原発への新たな投資をしづらくなっている。
 米ハーバード大学のヘンリー・リー教授(エネルギー政策)は「エネルギーは時代によって変化し、原発のシェアが伸びる時は、再びくるかもしれない。原発は利益を生まないという経営判断がされたまでで、原発の是非とは関係ない」と話した・・・

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