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朝日新聞社

原発延命+再稼働を問う 電気の恩恵と引き換えに増え続ける負の遺産

初出:2014年10月27日〜11月25日
WEB新書発売:2014年12月11日
朝日新聞

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 福島の過酷事故の教訓を忘却したのか、安倍政権・国・電力業界は再稼働を急ぎ、さらに40年廃炉原発の運転延長・原発新設を進める。だが、原発が止まったままでも電気は足りている。原発でなければならない理由とは何か。原発推進でかかる膨大なコストは誰が負担するのか――。廃炉と原発の新増設、核燃サイクルと日米安保、成長戦略と原発輸出、敦賀原発と活断層、高レベルの核のゴミと処分場など、長期に及ぶ不透明な諸問題を専門記者が説き明かす。

◇第1章 廃炉から新増設、重なる思惑
◇第2章 核燃サイクル、中ぶらりん
◇第3章 原発輸出、安保の影
◇第4章 岐路の原電、延命に奔走
◇第5章 核のゴミ、遠い決着


第1章 廃炉から新増設、重なる思惑

◎40年ルール、国・電力は
 小渕優子経済産業相(当時)は辞任に追い込まれる前の2014年10月17日、省内の大臣室で電気事業連合会の八木誠会長と向き合った。
 「運転延長を申請する必要がある7基の扱いを早期に示してもらいたい」。小渕氏がいう7基とは、16年7月時点で運転40年を超え、15年7月に延長申請をしないと廃炉(*)になる古くなった原発のことだ。
 このうち4基を八木氏が社長を務める関西電力が抱える。「できるだけ早く回答したい」。八木氏はそう応じた。
 小渕氏は内閣改造の「看板閣僚」。期待されたのは原発再稼働に理解を広げることだ。とくに、原発への不信が強い女性の説得役として、2児の母でもある小渕氏は適任とされた。
 「廃炉を同時に進める姿勢を明確にしたい」。小渕氏の意向は、原発を減らす姿勢を明確にして原発再稼働を納得してもらうというものだった。それは経産省や電力業界の思惑とも重なった。国の要請があれば、電力会社は立地自治体に廃炉を説明しやすい。当初は単なる表敬訪問だった両氏の会談は、政治的に重要な意味を持つ場となった。


 電力会社が廃炉を決断しやすい仕組みづくりも両者の「あうんの呼吸」で進む。廃炉を決めると、1基あたり数百億円の損失計上を迫られるため、損失計上のルールを14年度内にも改める。立地自治体に配慮して電力会社が廃炉をしぶらないよう、地元への財政支援の検討も始めた。
 14年8月の経産省・原子力小委員会。事務方は、新設から廃炉まで原発の総費用を回収できる収入を電力会社に保証する英国の仕組みを示し、具体策の検討に着手した。経産省の狙いは、廃炉後の建て替えを含む原発の新増設へ布石を打つことだ。それは、電力業界が求めていたことでもある。
 だが、肝心の廃炉に課題が山積している。
 「原発停止が長引くと年100億円分の仕事が減る」。国は13年度、原発がある福井県敦賀市と美浜町の経済的な影響について試算をまとめた。廃炉まで踏み込むと、建設工事や作業員の宿泊施設、飲食業などへの影響は「長期停止の比ではない」。敦賀市の河瀬一治市長は強調してきた。
 福井県は13年秋、立地自治体として初めて廃炉対策の専門部署を設けた。近く具体策の検討会議を立ち上げるが、取り組みは始まったばかりだ。美浜原発に近い地元、美浜町丹生区の元区長、庄山静夫さん(61)は言う。「廃炉は建て替えが前提だと思っていた。核燃料だけ置いておくというのは受け入れられない」
◎解体手探り、処分場も未定
 茨城県東海村にある日本原子力発電(日本原電)の東海原発。1966年に国内初の商用原発として運転を始めた東海原発は98年に停止し、01年から廃炉作業が始まった。いまは原電と協力会社の社員ら60〜70人が働いている。
 14年10月21日、原子力規制委員会の田中知委員が視察に訪れた。コンクリートがむき出しになった熱交換器建屋のすぐ横にプレハブ小屋が並ぶ。「遠隔操作室」と呼ばれ、ここで建屋内の設備や機器を切断するロボットアームを操縦する。
 廃炉作業は、原子炉内の核燃料を取り出した後、放射能の影響が小さいところから始める。高さ25メートル、重さ750トンある円柱状の熱交換器は、原子炉で生まれた熱を水に伝える設備。交換器の内部は汚染されているが、作業員が直接内部に入り、機器を使いながら解体することもできる。
 それでもロボットアームを使うのは、放射線量が高い原子炉の解体をみすえ、作業員に操作に習熟してもらうためだ。アームを駆使して3年、ようやく一つを解体し終えた。熱交換器は四つある。全体の廃炉が終わるのは25年度を予定している。
 初期型の東海原発は原子炉を炭酸ガスで冷やす。これから廃炉を進めるのは水で冷やす軽水炉で、廃炉の技術も異なる。田中氏は視察後、「ガス炉の経験がすべて使えるわけではない」と語り、軽水炉の廃炉に向けた技術開発を急ぐ必要があると強調した。
 放射性物質を閉じ込めながら、どう作業を進めるのか・・・

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