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文化・芸能
朝日新聞社

風と木の詩をうたったとき 漫画家・教育者、竹宮恵子さんの語る「創作と教育」

初出:2015年1月5日〜1月16日
WEB新書発売:2015年1月29日
朝日新聞

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 昭和24年生まれで、少女漫画の世界に繊細で哲学的なタッチを持ち込んだ「24年組」漫画家の一人、竹宮恵子さんは、2000年に京都精華大学教授に就任、現在、同大学の学長を務めている。代表作「風と木の詩」では男性同士のベッドシーンを描き、現在にまで続く「ボーイズラブ」の源流をつくり、「地球へ…」では硬質なSF設定と美少年という、これまた今日のライトノベルに引き継がれる原型をつくった。徳島の少女時代からデビューに至るまでの前半生、そして教員に転じてからの思いや使命感などを深堀りする好インタビュー。

◇1 「風と木の詩」、実は少女の内面世界
◇2 進駐軍家族の記憶、初期の作品に
◇3 新人賞に落選、「何か」が足りない
◇4 「仲間がほしい」石ノ森先生に手紙
◇5 入賞も大学合格も作戦勝ち
◇6 3作同時に連載、大学中退し東京へ
◇7 女性版「トキワ荘」、憧れの作家と同居
◇8 前例ない大学教育、考えに考えた
◇9 学長職、漫画描く時と変わらぬ面白さ


1 「風と木の詩」、実は少女の内面世界

 ――竹宮さんの代表作といえば、美しい筆致で少年の内面を描いた「風と木の詩(うた)」(以後、「風木」と表記)と、SF大作「地球(テラ)へ…」。「風木」の性をめぐる描写は、1976年の連載開始から衝撃的でした。

 なにしろ同性愛のベッドシーンで始まる作品ですからね。私もさすがに怖かったですよ。どんな反響があるかわからないので、編集者には「しばらくファンレターは持ってこないで下さい」とお願いしました。
 表現の問題として、男女の愛を深く語ろうとするとベッドシーンでなくては語れない形もありますよね。ところが当時は、ベッドの上に男女の足を3本描いただけで警察に呼ばれ、作品は世に出せなかった。でも不思議なことに、男性同士なら問題にならなかったんです。

 ――そんな誕生秘話があったんですね。竹宮さんの意図とは別に、いわゆる「ボーイズラブ」の先駆けとも言われます。

 確かにそうした流れを生むきっかけになったのでしょうが、私の意図はまったく違います。仮面のかぶり方を教えてしまいましたね。女性の描き手にとって、女性の性衝動を描くことは超えがたいハードルでしたが、男性の姿を借りれば描ける。そういう仮面。

 ――歌人で劇作家の寺山修司さんや、心理学者の河合隼雄さんが「風木」の深い部分を読み解き、高く評価しました。

 ありがたいことでした。河合先生は哲学者の鶴見俊輔さんから「これ、面白いんだよ」と薦められたそうです。新聞に「思春期の少女の内的世界を見事に表現した」と書いて下さいました。主人公は少年なので「少女」という言葉に驚きましたが、考えてみれば確かにそうだなあと納得しましたね・・・

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