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朝日新聞社

プロメテウスの罠〔58〕 自然エネ危機「もう一回死ねと言うのか」

初出:朝日新聞2014年11月22日〜12月11日
WEB新書発売:2015年1月29日
朝日新聞

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 「あれが我が国の近未来の姿ではないか」。自然エネ政策に邁進する欧州を視察した日本の自治体首長が感嘆する。問題は、日本の現政権が原発を重視し、自然エネを主要電源に決めないことだ。そのうえ電力会社が突然、固定買い取り制度(FIT)を中断。市民発電や自治体は事業計画が大幅に狂い、悲鳴を上げた。だが福島の過酷事故で原発は停止し、送電線は空いている。なぜ、それを自然エネ送電に使わないのか――。自然エネ普及の先駆者や関連事業者らの取り組みや苦悩を探り、日本のエネ政策の矛盾を問う。

◇第1章 先駆者に突然の嵐
◇第2章 原発10基分のはずが
◇第3章 あと1日しかない
◇第4章 「1足す1は1に」
◇第5章 また死ねというのか
◇第6章 4・17ショック
◇第7章 風力のまちの焦り
◇第8章 送電線につなげない
◇第9章 眠れる海底ルート
◇第10章 一気にフル送電
◇第11章 北本の電気のおかげ
◇第12章 原発が戻る時のため
◇第13章 閉鎖された電力市場
◇第14章 少なすぎた義務量
◇第15章 小さな枠、クジ次第
◇第16章 新制度は誕生したが
◇第17章 「日本の近未来の姿」
◇第18章 アセスがブレーキに
◇第19章 鳥は衝突するのか
◇第20章 核心突く福島の提言


第1章 先駆者に突然の嵐

 少し前からうわさは流れていた。しかし、これほど突然に嵐がくるとはだれも思わなかった。
 「私たちの風車は大丈夫か」
 2014年9月末、市民風力発電(札幌市)社長の鈴木亨(すずきとおる)(57)の携帯電話が鳴った。
 北海道、東北、四国、九州、沖縄の5電力会社が、一斉に自然(再生可能)エネルギーの新たな受け入れの中断(回答の保留)を発表した。
 内容は、会社ごとに微妙に違う。
 「大規模太陽光発電(メガソーラー)だけか」「太陽光はすべてか」「風力や地熱も対象か」……。
 一時、情報は入り乱れた。
 宮城、岩手、秋田の3県の生活協同組合などが、秋田県の日本海沿岸で計画する3基の風力発電の関係者も心配して鈴木に聞いてきた。
 「接続可能な枠に入っている。大丈夫。保留の対象にはならない」
 鈴木が東北電力に確認して伝えると、電話の相手はホッとしていた。
 市民発電の先駆者――。それが鈴木の代名詞だ。


 生協職員として働いていた1987年、扱っていた茶の葉から放射性セシウムが検出された。前年のチェルノブイリ原発事故の影響と見られた。茶は焼却処分された。
 道内ではその後、泊原発1、2号機が稼働した。組合員の「安全な食品は選べても、エネルギーは選べない」という言葉がきっかけで、市民出資による風力発電に乗り出した。
 01年9月、国内初の市民風車「はまかぜちゃん」が北海道浜頓別町で回り始めた。
 市民が数十万円を持ち寄って風車を建てる。その手法は青森、秋田、茨城、千葉、石川に広がっていく。
 石狩市で年内の運転開始を見込む2基を加え、全国で18基に増えた。
 そのすべてに鈴木はかかわる。
 東日本大震災後の12年7月、自然エネによる電気を高く買う固定価格買い取り制度(FIT)が始まり、市民出資の太陽光発電も急増した。
 そこに降ってわいたのが、電力会社の買い取り中断だった・・・

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プロメテウスの罠〔58〕 自然エネ危機「もう一回死ねと言うのか」
216円(税込)

「あれが我が国の近未来の姿ではないか」。自然エネ政策に邁進する欧州を視察した日本の自治体首長が感嘆する。問題は、日本の現政権が原発を重視し、自然エネを主要電源に決めないことだ。そのうえ電力会社が突然、固定買い取り制度(FIT)を中断。市民発電や自治体は事業計画が大幅に狂い、悲鳴を上げた。だが福島の過酷事故で原発は停止し、送電線は空いている。なぜ、それを自然エネ送電に使わないのか――。自然エネ普及の先駆者や関連事業者らの取り組みや苦悩を探り、日本のエネ政策の矛盾を問う。[掲載]朝日新聞(2014年11月22日〜12月11日、19600字)

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